SAL

MENU

作成日時:2018.07.19
更新日時:2024.03.08

自分で打たないことがゴールにつながる? 北海道のエース・水上玄太の勝利への美学

PHOTO BY軍記ひろし

日本フットサルの最高峰の舞台で「鉄人」と呼ばれる男がいる。エスポラーダ北海道のエース・水上玄太だ。“キング・カズ”こと三浦知良に学んだ超自己管理術で、Fリーグ開幕から12年間、大きなケガもなくピッチに立ち続けてきた。そして昨シーズン、通算300試合出場(歴代1位を独走中)と通算200得点(歴代4位)という2つの偉大な記録を達成。今年35歳になった水上がこれほどの記録を残し続けられることにはワケがある。それは、水上にしかできない極意だった──。



自分で打たないことがゴールにつながる?

8本で4点。なんの数字だろうか?

これは、33試合のリーグ戦のうち、5試合を終えた時点の水上のシュート数と得点数。名古屋オーシャンズで7点を挙げて1位を走るぺピータから数えて6番目、水上は今年も得点ランキング上位に名を連ねている。過去2シーズン、12チーム中9位、10位と下位に沈んだ一方で、水上の得点は22点(7位)、24点(7位)といずれもチームトップ。しかも、4分の1以上のゴールを一人で奪ってきた。

水上が優れているのは「得点力」よりも「決定力」。それは数字でも明らかだ。

8本で4点は、シュート決定率50%、2本に1点を決めるということになる。もちろん、シーズンが始まったばかりの数字で統計を取ろうというのは浅はかだが、それでもすでに、他の選手との違いは顕著に見られる。

水上よりランキングが上の5人はいずれも、30本前後のシュートを放っている。水上だけ一ケタなのだ。シュート数の少なさに比例しない得点数の多さは、この12年の数字を見るともっと分かりやすい。水上は通算得点ランキング4位なので、上位3人との比較で示してみよう。

通算試合/通算得点/総シュート数/シュート決定率/1試合の平均シュート数
※第5節終了時点
◆森岡薫(ペスカドーラ町田)
291試合/277点/1512本/18.3%(5.4本で1点)/5.2本
◆クレパウジ・ヴィニシウス (ペスカドーラ町田)
213試合/239点/1324本/18.0%(5.5本で1点)/6.2本
◆ボラ(フウガドールすみだ)
270試合/220点/1622本/13.5%(7.3本で1点)/6.0本

◆水上玄太
311試合/205点/1025本/20%(5本で1点)/3.3本

水上は少ない手数で確実にゴールを仕留めていることがわかる。こんなデータから水上は「省エネスコアラー」と呼ばれてきた。自身は「ワンタッチゴールがきっと180点くらいですよ(笑)。味方が、あとは決めるだけといういいパスをくれるから……」と謙遜し続けてきたが、他にも何か、極意がありそうだ。

「いや、ないです」

「というか去年、もっとシュートを打たなきゃダメだなって思ったんです。そう、思ったんですけど、まだ少ないんですよね……」

あれ、極意はないのか……。だが、水上は言う。

「(チームがゴールする)確率を上げるには自分じゃないということですよ」

つまり水上は、シュートを打てそうな場面でも、より確実な選択肢を選ぶということ。それはストライカーとしては、ゴール意欲に欠けると言われるかもしれないが、一方で、誰よりもチームプレーに徹している証拠でもある。

「自分でいける時にはいきますけど、シュートに関してはそれこそ(鈴木)裕太郎の方がうまいですから」

5-1と快勝した第4節のすみだ戦、水上は2つのゴールを味方に“譲った”。相手のパワープレー中にボールを奪った高山剛寛が、前線に走る水上に向かって蹴り込んだが、触ったか触ってないかのボールがそのまま無人のゴールに転がった。

「審判に『触った?』って聞かれたんです。本当は触ったと言いたかったけど、VARで確認されたら恥ずかしいし『2番(高山)のゴールです』って」

もう一つは、カウンターで左サイドを駆け上がる高山からゴール中央で受けた水上が、GKとの1対1を避けて右にはたいて、これをフリーの鈴木が流し込んだ。

「いつも、裕太郎にはああいう場面でいいパスをもらっているんです。だからこそ、確実な方に渡そうと。あの場面は3対2の数的有利で、確実に1人が余っていましたから。本当は自分で決めたいんです。でも、俺じゃねーなってなる。だから、こぼれ球とかには集中してますよ。結局、自分の点よりも、勝ちたいんです。この10年以上、大して勝ってきてないから(苦笑)、勝てる時に勝っていかないと」

北海道は、第2節から第4節まで3連勝して現在4位と、好位置をキープしている。

そんなチームに追い風をもたらしているのは、“自分で打たないことがゴールにつながる”という、水上がこだわるゴールへの、勝利への美学に違いないだろう。



■次節試合日程
DUARIG Fリーグ2018/2019 ディビジョン1 第6節
7月21日(土)
墨田区総合体育館
13:30 エスポラーダ北海道 vs 湘南ベルマーレ
15:45 アグレミーナ浜松 vs ヴォスクオーレ仙台
18:00 フウガドールすみだ vs Fリーグ選抜
アリーナ立川立飛
14:30 立川・府中アスレティックFC vs バサジィ大分
16:45 シュライカー大阪 vs バルドラール浦安
19:00 名古屋オーシャンズ vs ペスカドーラ町田

DUARIG Fリーグ2018/2019 ディビジョン1 第7節
7月22日(日)
墨田区総合体育館
14:30 バサジィ大分 vs 湘南ベルマーレ
16:45 フウガドールすみだ vs 名古屋オーシャンズ
19:00 Fリーグ選抜 vs バルドラール浦安
アリーナ立川立飛
13:30 シュライカー大阪 vs エスポラーダ北海道
15:45 立川・府中アスレティックFC vs アグレミーナ浜松
18:00 ペスカドーラ町田 vs ヴォスクオーレ仙台



▼ 関連リンク ▼

  • AFCフットサルアジアカップ2024予選|大会概要・試合日程&結果一覧
  • Fリーグ2023-2024 試合&放送日程

▼ 関連記事 ▼