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作成日時:2018.06.28
更新日時:2024.03.08

清水和也が放つ森岡とも皆本とも異なる風格。若きエースからチームを勝利に導く大エースへ。

PHOTO BY軍記ひろし

フウガドールすみだの清水和也は、紛れもなく今後の日本フットサル界を背負って立つ選手だ。これまでも、ゴールという目に見える結果でその期待に応えてきたが、第2節のバルドラール浦安戦では、これまで以上に重要な選手であることを味方にも相手にも示した。森岡薫や皆本晃といった“キング”たちとはまた違った風格を漂わせる21歳のエースは、この先いったい、どんな“大エース”へと成長していくのだろうか。



途中出場で勝利の原動力となった清水和也

2年連続でリーグ戦4位のフウガドールすみだは、レギュラーシーズン後に行われるプレーオフが上位5枠から3枠に減ったことを考えても、昨シーズンからの“現状維持”では生き残れないだろう。だが彼らは今シーズン、他チームからの選手補強ゼロで挑むことを決めた。そうなると必然的に、選手個々のレベルアップとチーム力の向上が不可欠だ。だが、開幕戦は優勝候補のペスカドーラ町田に0-3で完敗した。

すみだは今シーズン、大丈夫なのか……。

そんな周囲の不安を一蹴した選手がいる。21歳の若きエース・清水和也だ。第2節のバルドラール浦安戦の序盤、清水はピッチに立たなかった。先月末から今月頭に開催されたリーグカップ戦もそうだったが、須賀雄大監督は、足のケガから回復しつつある清水のコンディションを考慮していた。

チームは8分に先制されてしまうが、須賀監督はまだ動かない。12分、戦況が好転しない中でようやく立ち上がる。「和也、次で行くぞ」。ベンチでそう声を掛けていた矢先、すみだは2点目を奪われてしまう。

「出番は必ずくると思っていた。2点目を取られた瞬間、やることが明確になった」

ピッチに送り出された清水は、チームを救った。後半、25分に左サイドでキープした清水は、中央への反転から鋭く右足を振ると、マークする相手DFの股を抜いて、ニアサイドに反撃の狼煙を上げるゴールを突き刺した。

「きれいなシュートには見えないですが、あのゴールがチームに勢いをつけると思った。(前半途中に田口元気が負傷退場していたことで)元気のこともあったし『自分で決める』という気持ちで取った」

これで息を吹き返したチームは、相手の猛攻を受けながらも一進一退の攻防を続けて、34分にボラのゴールでついに逆転。浦安がパワープレーを始めたことで、ピッチには同点にされかねない緊迫感が生まれていたが、その空気を一変させたのも清水だった。残り時間はわずか10秒ほどのことだった。

「時間もなかったし、リスクを掛けようと。(サイドでボールを持つ相手の)外側からプレッシャーにいったら下げざるを得ないので、(中央の選手へとパスを戻す)そのボールを狙った」

ピッチ中央で相手のパスをインターセプトした清水はそのまま左サイドへと持ち上がり、追いすがる相手を冷静に振り切って、無人のゴールにシュートを流し込んだ。残り時間1秒で5-3。すみだは初勝利を飾った。

驚かされるのは、試合後の取材エリアで2つのゴールシーンを振り返ってもらった際のやり取りだ。コンマ何秒の時間でいくつもの選択肢を頭に描きながら、ピッチや相手の状況を瞬時に判断して的確に決断、実行に移していたことと、それを正確に言語化できることが印象的だった。「珍しく落ち着いていた」と謙遜するが、清水は間違いなく進化していた。

試合を動かして、チームを勝利に導く選手になる。10代の頃からクラブの期待を背負い、そんな野心を秘めていた清水は、ピッチで違いを生み出す選手になった。その姿は、“キング”と呼ばれるペスカドーラ町田の森岡薫や立川・府中アスレティックFCの皆本晃と比べても遜色がない。清水は満面の笑みを浮かべながら言う。

「もちろん、僕は点を取るピヴォにこだわっていますし、ボールを持った時にお客さんにワクワクしてもらいたい。でも、ゴールだけではなく、守備やいろんな面でも貢献したい。今シーズンは、薫さんや晃さんとは違った良さを見せられると思います」

堂々としていながらも、どんな質問に対しても真摯に誠実に受け答えする姿は、他に比べられる選手がいないほどにFリーガーの鏡のようでもある。一方でピッチ上では、目をギラギラさせながら、チームの勝利のために、自分の持ち味を最大限に発揮している。

クラブのみならず、日本代表として世界の舞台で互角以上に戦えることを目指している清水は、もはやFリーグの水準をはるかに超える選手だろう。

そんな清水は29日(金)、19:30からのナイトゲームで墨田区総合体育館のホーム開幕戦を迎える。

「フウガというチームは、それこそ部活のように、仲間を思ってプレーできる。個人の戦いだけではなくて、チームとして盛り上がれるチームなので、そういうみんなのプレーでお客さんの心をつかみたい。それに今年は、フウガの“アレ”が復活するかもしれないので、ぜひ会場に来てほしいですね」

「フウガの“アレ”」とは、おそらくアレのことだろう。敵も味方も関係なく、会場にやって来たすべての人の目を釘付けにして盛り上がるアレだ。気になる人はぜひ、清水とすみだを見に墨田区総合体育館のホームゲームへ──。



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