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作成日時:2022.02.14
更新日時:2022.02.14

正直帰りたかった皆本晃が卵ではなくベーコンになった、W杯の光と影の話|ブルーノ・ジャパンの真実

PHOTO BYFIFA/Getty Images

元来、インタビューとは不自然なものである。密着取材もまた然りだ。

取材対象者は、記者の向こう側にいる読者を、カメラの向こう側にいる視聴者を多かれ少なかれ意識する。

パブリックな自分を、そう見られたい様で、伝えようとする。

とはいえ、それも嘘ではない。嘘ではないが本当の本音でもない。本音はきっと行間に、何でもない仕草に、意図的か、無意識か、忍んでいる。それを記者や編集者が汲み取って露出することができれば、勘のいい読者や視聴者には届く。

たぶんノンフィクションこそフィクションなんだ、と。奢ることなかれ、と。それが私のポリシーだったりする。だって僕らはそもそも、ダイレクトな表現が苦手な、察し合いの国の人間なのだから。

──ただ、時に。

絶妙のタイミングで、心から信頼する相手との取材だった場合、本当の本音が剥き出しの記事が出来上がることがある。しかしその多くは残念ながら刺激重視で、品を欠く場合が多い。

この記事は果たして──。

当事者以外の喉元はとうに過ぎてしまった2021年11月、戦友である渡邉知晃に向けて、ケロイドを通過して発せられた声は、本当の本音なのか。

「ブルーノ・ジャパンの真実」

我が編集部ながら仰々しい企画タイトルである。こんな大風呂敷を広げられたのは、このインタビューがあったからこそだろう。

編集に際して、あえて砕けた表現を残した。「品がない」というお叱りは覚悟している。それでも。まだチクチクと、痛み耐えつつ発せられた皆本晃の本音が、渡邉知晃に向かう空気感と、知晃の容赦ない質問に込められた愛を、勘のいい皆さんに感じてほしかった。

最後に一つお願いがある。

どうか、皆本晃になったつもりで、三度読んでほしい。

これは、ブルーノ監督の下でプレーした2人の偉大な日本代表選手による、敬意と自負と自責の込もったW杯ぶっちゃけ話である。

インタビュー=渡邉知晃
編集=高田宗太郎

※インタビューは11月24日に実施した

大会が始まる段階で、もう覚悟してた?

──たくさん話したいことあるんだろ?

それはおまえが引き出すんだろ。適当にしゃべってくれ。

──他のインタビューでも言ってたじゃん。思うところはたくさんあるって。それを吐き出す場所を提供して、後世に残してあげようと思って。

そんな精神があったのか。

──そういうの、吐き出したほうがいいだろ。

そうだね。メディアは活躍した選手にしか行かないからね。

──じゃあ、W杯を終えて、率直な感想を。

最近?

──まずは、終わった直後。

直後は「これで終わっちゃうんだ〜」って感じ。

───ブラジル戦の後?

そう。だけど、大会が始まる前からこういう結末が見えていたからね。オプションの選手になってたから。俺にとってはW杯直前のモロッコとの親善試合がアピールする最後のチャンスだと思っていた。それでダメだったら、もうW杯は声出しだろうなと。

──スペインに入ってから何試合かやったと思うんだけど、初めの頃から?

7月末から8月頭の国内合宿から「これ、俺の評価相当低いだろうな」と感じていた。選手って分かるじゃん。なんで俺が呼ばれたのかと思ったよ。監督とかは「おまえのこと評価している」「信頼している」って言うけど、選手は一番シビアで敏感じゃん。いろんなセットの組み方、声かけ、エラーへの対処で分かるから。それで「信頼している」って言われても無理じゃん、って。

──ブルーノは分かりやすいしね。

マジでそう。セット分けもそうだしね。相当厳しい戦いだなって、すぐに悟った。これはひっくり返さないと、W杯でピッチに立てないと思ったから。

──最後、欧州遠征の6、7試合、そこで覆すしかないと。

試合がかなりあったから、ワンチャンあるかなって。完全に自分が構想外なのは分かったけど、でもチャンスは少しはあるじゃん。そこで絶対違いを見せないと、これはもうなにもないなと、そんな感じ。

──メンバーが絞られて、W杯前にブルーノとはしゃべった?

2回、しゃべったよ。

──おまえから?

1回目は呼び出されて、2回目は最後の親善試合の前に俺から行って「頼むから使ってくれ」って。

──ちょっと待って、1回目から聞くわ。

1回目は「パフォーマンスが低い」と言われた。W杯直前合宿でそんな調子も良くなかったこともあって「もっと頑張れ」って言われた。「頑張ります」って答えたけど……。端的に言うと「パフォーマンスが低いからこのままだと大会で活躍できない」ということ。少し足も痛かったからパフォーマンスが低いことに反論する気はなかった。心の奥底で、もうちょっとだけ待ってくれって思ってたけど、言い訳もできないし「頑張ります」って。

──で、2回目は大会直前に?

その頃には、体はかなり良くなって、いけそうな気もしていた。でも正直、親善試合も出場時間が相当少なくて、基本は前半2本で終わり。後半はパフォーマンスに関係なく1本出番があればいいほうという感じ。1試合くらい、3rdセットをもっと使ってくれよって。ほぼノーチャンスだった。

でも前半は出てるから、そこで結果を出せれば良かったけど、かなり厳しい戦いだった。それで、2回目にブルーノに話に行ったときは、「頼むからもう1回だけ出してくれ。これで結果を残せなかったら納得するから」って懇願した。

──ブルーノはなんて言ったの?

「おまえのパフォーマンスが良ければ使う」と。俺は「上がってきているから使え」「いや、上がってきたら使う」という押し問答。「使え」「上げろ」って。「練習で結果を出せ」「出してるよ」って(笑)。これで、大会前最後の親善試合のモロッコ戦は、ワンチャンあるかもしれないと思った。

でもそこで点を取れなかったから、終わりました、と。もう俺は日本のために声を出そうと思った。

──大会が始まる段階で、もう覚悟してた?

余裕で覚悟してたよ。大会に向かう段階でもう何度も「うわー出られないかー」って。「今日の練習調子良かったから使ってくれないかなー」「使わねーかー」って。そんな毎日を過ごしてた。始まる直前まで自分のことにフォーカスして頑張ろうと思ったけどダメだった。大会中は、もう自分のことを言っている場合じゃないからね。

 

行けなかったやつもいるなかで、おまえは正直、どっちが良かった?

──大会期間中のメンタルはどうだった? チームスポーツだからマイナスになるような発言や態度は、年齢的にもできないし、しないだろうから。でもホテルの部屋とか1人の時間もある。

相当きつかったよ。フットサルの話は目にしたくないから、ほぼSNSは見てないもん。ホテルの部屋が1人部屋でまだ良かったよね。外出たら一応さ、最年長に近いところにいるわけで、そいつが暗かったらやばいじゃん。

──そこは明るく振る舞った。

「あいつ暗かったな」って思われていたら、俺はもう失格だよね。みんながどう思っていたかは知らないけど、そう思われないようにしていたつもり。部屋に戻ってから「はー」って。でも「明日も頑張らなきゃ」って。

──アジア選手権とかだったら、直前合宿が1週間くらいで、大会期間は2週間とか。今回のW杯は、合宿含めてもかなり長かったじゃん。

もう、帰りたかったよ。

──本音言うね(笑)。

本音はそうだから。帰りたかったよ。でもさ、永久にループする。「帰りてー」って思って、次の瞬間「来れなかったやつもいるから」「ここに来たことに意味がある」と。これは俺が望んだ仕事じゃないけど、こういう仕事をする人間も必要だし、いなきゃいけない。チームは、全員がハッピーにはなれないからね。

俺も取りつくろってたよ。外向けには「すげーいいチームです」とか。俺だってちゃんと仕事をしていたと思うよ。

──時折、帰りたかった。

けど、帰れない。「俺はここに、こんなことをしに来たのか?」「こんなことのために10何年もフットサルやってきたのか?」「いやでも、明日も頑張らないといけない」「俺はできるよ!」って。永久にループしていた。

──俺もアジア選手権で経験したから分かるけど、なにがきついって、正直20代前半とか数年後もある年齢なら受け入れ方が変わる。

そうだね。

──でもベテランの年齢でその立ち位置になると、マジできつい。

マジできちぃーよ。

──自分が主力で、出られない選手が若手だったら、若手としては「頑張ってください」ってなるけど、若手が主力だと向こうも気を遣うじゃん。試合に出ている若手はベテランに対してはなにも言えないしね。

そう。だから、気を遣うわれないようにするのも大変。俺がチームの邪魔をしてはいけないって。いや、きついよ。

──結果的にだけど、少しは出たじゃん。0分じゃない。各試合で必ず出場時間はあったわけだけど、自分の予想より多かった? 予想どおりだった?

なんとも言えないな。試合によって。アンゴラ戦はもっと出られると思っていた。レベル的にももっとチャンスがあると思っていた。

スペイン戦の前半は、なぜかけっこう出られた。「意外と出してくれるんだ、よっしゃー!」と思っていたら、後半全く出られない。「どういうこと?」って思ったよね。基本的に後半は1、2本しか出られなかった。

パラグアイ戦は失点に絡んだから、出られないのは仕方がない。若手のように、ワンプレーでミスったら終わりというプレッシャーには常にさらされていたから。でもブラジル戦はまた出られたし。よく分からなかったな。試合次第で、長かったり短かったり。でもまぁ、予想よりは出られたかな。

──そうだよね。平気でゼロってこともあるから。

予想よりは正直、出られた。でも、自分が望んでいた出場時間ではなかった、という感じかな。本当に0分とか、1本で終わりの可能性もあったからさ。そんなことはなくて、試合で確実に3回くらいは出ていたから、思っていたよりはね。でもそこに、出たからという喜びはない。

──到底納得できるものではなかった。

そうそう。勝ち取ったわけでもないし、みんなが疲れているからちょっと出たくらい。

──理想は、2つ目のセットまでに入って出ること。

そうだね。ほとんど2つ目まででは使われなかったから。ピッチで出ている選手は、毎試合後半に落ちて、足が止まっていくわけじゃん。でも、俺らみたいな信頼されていない選手は後半に使ってもらえない。

俺が監督でもそうかもしれないから、監督のことは否定しないよ。でも現実は、毎試合後半に足が止まって、プレスが弱くなってやられている。どの試合も、前半はプレスが効いていたから良かった。後半は外から見ていて、明らかに落ちているのが見えるけど、使ってもらえないのも分かるから、ベンチで俺らは「頑張れ」「もうちょっとだ」「もっといけるよ」って言うしかない。

──心では「使ってくれ」って?

本心では思っているけど、でも、俺の仕事はここで声をかけることだと思っていたから、試合中に「ふざけんなよ」とか、そういうのはなかったよ。

──大会期間中に誰かと話はした?

星(翔太)とはしたよ。あとは、絡みづらくなったりするの嫌だから冗談で「使えよー」とか、笑いでは言っていたけど、ガチで「使われねー。キツいっす」ってのは、星パイセンにね。

──で、なんて?

「やるしかねー」って。バスでは一番後ろの席で一緒だから「今キツいっす」って。他の人には見せてないけどね。

──それで翔太さんは「やるしかねーよ」って。

そう。今思うと、滝田(学)とかすごかったなーって。試合に出られなくてもずっと声出してたし、テンション高かったなとか。滝田を見習って頑張るわって。

──滝田は少し前に外れて、仁部屋和弘は直前に外れた。行けなかった選手もいるなかで、おまえは正直どっちが良かった?

究極だね。でもそれは、行けてよかったと思ってるよ。どっちが辛いかは、経験していないから、行けなかった人の気持ちは分からない。行って、出られない辛さも味わった人しか分からない。人生の集大成でそれが起こることは、なかなか経験できないとは思うけどね。

──行くか行かないかだったら、行ったほうがいいってなる。とはいえ、気持ち的に割り切れるのは、実は行けなかったほうかもね。

気持ちの整理はな。毎日、首をずっと緩く締められている気分だから。

日本人フィクソの未来をそこまで分析できてて、でも納得はできなかった?

──最終的に、その立ち位置になってしまった理由をどう分析している? ポジション的にアルトゥールが入ったから?

それもそうだし、対世界となったときにブルーノのなかではずっと、どこかで俺のサイズ感は気になっていたと思う。そこに対して俺は結果で答えを見せられなかったことに尽きる。ハンデはあったし、そこで、サイズがなくてもやれると示さなきゃいけないというものを背負っている意識はある。ブルーノはそうは思っていなかったけど、俺は外国人に対してのほうが得意だと思ってるからね。

──なるほど。

ブルーノの理想は、サイズがあって、相手のピヴォと戦えるフィクソがほしかったと思うよ。そこに値する選手がいなかったのと、そのなかでは、他の選手を上回るパフォーマンスを俺がしていたんだと思う。俺が応えられなかったこと、それに変わる選手が現れたこと、そのタイミングでそっちを使った、ということだと思うよ。

──サイズ感で上回れなかった。

そう、フィクソはずっとそこと戦わないといけないから。ピヴォもそうだと思うけどね。サイズがないことでイメージを持たれるし。でも、日本人でそのサイズのフィクソはなかなかいない。この先も、サイズ感があって、パスもできて、守備もできて、ゲームを作れるフィクソが出てくるか分からない。

だから、ここで俺が結果を出せなかったことは先々へ響くかもしれない。俺が結果を出せていたら、フィクソ像が変わったかもしれない。世界を見ても、スペインとかアルゼンチンだって、そんなにデカいわけじゃない。でも「フィクソはデカくないと」と思っている人が大多数だから。

それを覆して、次の世代の人にも「皆本晃でもいけるんだ」っていうパフォーマンスをしたかった。そういう活躍をしたかったけど、残念ながらできなかった。申し訳ないけど、次の世代に託すしかないよね。

──アルトゥールみたいな日本人フィクソがいるかというと、現状ではいない。これから出てくる可能性も高くはないなかでその課題が残った、と。

今回、結果が出たのはアルトゥールがいたからというのは大きいと思うよ。俺の役割でできることはあるけど、彼と同じ役割はできないからね。俺もシュートは打つけど、アルトゥールほどの威力も決定力もない。長年取り組んでもこれくらいが限界だった。で、俺の代わりができる選手がいるわけでもないから俺は控えに。アルトゥールが俺に足りないことを埋めた。そういうフィクソのほうがいいからね。

今大会は彼がやってくれたし、次のW杯もアルトゥールはいるだろうけど、その次だよね。そのタレントは作れるのか? ってこと。もちろん、彼をモデルにして彼を目指す選手がいて、できるようになったらめちゃくちゃいいと思う。でも今見ている感じ、そんなことができる選手、10年経ってもいるかなって思う。20年あれば出るかもだけど。彼がいなくなったら、国際レベルでプレーできるフィクソがいない状況が生まれると思う。

だからフィクソになにを求めていくべきかは、また数年後に同じ課題にぶつかると思う。俺がその答えになりうると思ったけど、そこまでいけなかった。出られなかった。

──そこまで分析できていて、でも納得はできなかった? 出られないことを。

選手だからね。もう1人の自分が冷静に状況を分析する。分かってるよって。でもそれを受け入れたら終わりじゃん。一緒に戦っているときにそれを受け入れちゃったらおしまいじゃん。

──隔離中に冷静になれた?

それはあるね。「終わっちゃったなー」って感じもある。2カ月前とは思えないくらいすごい昔のことに感じるから、思い出したくないのかもしれない。

──メンバーとか、翔太さんと話した?

ベーコンの話覚えてる? おまえはいなかったっけ?

──それ、なんの話?

ブルーノの話で、朝食で目玉焼き(卵)とベーコンが出てくるだろ、どっちがすごいかみたいな話。「鶏は卵を産み落とし続けることができる。でもベーコンは自分の体を削ぎ落として、そこに提供している。お前ら、卵じゃなくてベーコンになれ」という話を、どっかの大会中にブルーノがしていた。それで翔太くんと「俺はベーコンになったと思うよ」って話した。しっかりベーコンやってたわって。

次に期待するのは、日本人らしい日本代表ってこと?

──他には?

ブルーノ・ジャパンが今までやってきたことを、完全にやり切れたかというと、完全にはそうじゃないと思っている。

──なんで?

プレスもかなり適当になっていたし、統率が取れていないことがたくさんあったし、サインプレーも甘くなった。

ブルーノのやり方は、守備もガチガチで、多様なサインプレーのイメージがある。でも、守備の3人目もかなりひどくなっていた。だから本当の意味でブルーノがやりたかったものを出せたのか、積み上げてきたものを全部出したかというと、そうではなかったかもしれないと思う。

けど、積み上げてきたものを出しただけで結果を出せたのか。全部負けたかもしれないし、スペインにボコボコにされたかもしれない。そういう結果があったかもしれない。プラスアルファで、アルトゥール、逸見勝利ラファエルとかがスパイスを、土台の上に載せたのが今の結果。どっちが良かったか、それは分からない。世間的には“結果は出た”と思われているんだよね?

──おそらく。

そうだとするなら、ブルーノの決断は間違っていなかったと思うよ。最後に手綱を離して、完全にではないけどフリースタイルにした。けっこう各所で、いろいろ起きてたよ。みんな大人だし、あとは名古屋の選手が多かったのもあるから、そこを埋めていく、それでもしっかりやっていくのは、いつも彼らがやっていること。みんなそんなことを今言っている場合じゃないと思っているから、選手はやるしかないって。

──なるほどね。

でも、今後の日本フットサルをどう分析するかということでは、いろんな意味で考えないといけない。フィクソもそう。今回プレッシングのチームだと言っていたけど、本当にそうだった? 数年前のほうがプレスがかかってたよね? でも、かかっていたからって世界で勝てるわけじゃない、と。フットサルはプレスをかけるゲームじゃないからね。

俺が監督でも考えるよ。自分たちがやってきたこともそうだけど、そこにプラスになる存在を使っていくのは全然ある選択だと思うから。表面的にも結果が出たからやってきたことが間違っていない、その間違っていないものはなにか。アドリブで、タレントでなんとかなっただけかもしれない。でもタレントは必要だよね、それを作るしかないよね。そこにどうフューチャーするかは、今後の代表選手に考えてもらいたいね。

──常に帰化選手がいるのか、いない状況でやるのか。

それはイタリア、ロシア、カザフスタンでも、スペインも昔はそうだった。フットサルではそれが普通。世界的にも普通のことだから、そこに対して違和感はあまりない。ただ、今のタイミングで日本にはそういう選手がいてくれたから助かったけど、いなかったらどうするのかってことも考えておかないといけないよね。

──なるほどね。それで、家族のリアクションはどうだったの?

家族は、俺が納得いっていないのが分かるじゃん。だから声をかけづらいよね。出られない人もいるんだし、出られて良かったじゃんって、そんな感じ。結局、あんまり言わないよね。「お疲れさま」。その言葉に集約する。奥さんはもちろん、今回が最後だと知っていたわけだから。

──そこはぶれてない?

気持ちはあるよ。

──あるの?

思ったよ。やっぱこのまま終わりたくねーなって、思うよ。気持ちはね。だから逆に、おまえがよくやめられたなって思った。俺は、一生気持ちが折れない。何かあったら次の目標を見つけると思うから、やめる日が来ないと思った。

──代表も?

代表もそう。唯一あるのは、気持ちはこうだけど、体がついてきていないことだね。体は「もうやめてくれ」って言っているからさ。だから続けられないんだろうなとは思うけどね。

──新監督が発表されたけど、どう?

どうって、監督が発表されたからやりてーってわけでもないよ。グレさん(木暮賢一郎)と一緒に仕事をしたい気持ちはあるけど。体がもう、やめてくれーだから。

──次の代表、木暮ジャパンに何を期待する?

これまでは外国人監督だったから、日本人らしさは彼らなりに解釈して、足りないことをやって埋めてくれた。でも次は、一番結果を出していた日本人が監督になる。「日本人とはこうだよ」っていうことを示してほしいよね。

絶対にグレさんのなかでも、こうすれば世界で戦える、日本が勝てるというのがあると思うから、形にしてほしい。トライしてほしい。それで結果を出してほしい。

──次に期待するのは、日本人らしい日本代表チームってこと?

グレさんには、こうしたら世界に勝てるというのがある。そう思っていた人間が、いよいよ監督をやる。俺らも長い時間代表にいて、何試合も戦ってきたなかで思うことはある。その俺ら以上に、日本人としての戦いについて思っている人なわけだから。3回もW杯に出た人がやるんだから、見たいよね。だから最初の合宿とかは行きたいよね。見学でもいい。2回目とかはもう呼ばなくていいので(笑)。

──グレさんのビジョンは聞きたいよね。

共有してほしい。最終的には試合で、日本人のフットサルのスタイルも見せてほしい。でもそれは、俺らは一緒に作っていく側の人間。代表選手として作らなくても、代表選手を送り出すチーム、送り出すコーチとして関わるわけ。

だから俺らにも「こうして勝っていきたい」というのは共有してもらいたいよね。これまでもいろいろやりたいことの話は聞いてきたけど、全部はまだ聞いていない。なにも知らないでフラットに見るのも楽しみだけど、知っていてそれに貢献もしたいと思う。そう思っていますよ。

 

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