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作成日時:2022.04.07
更新日時:2024.02.16

奇跡の残留力|ボアルース長野はなぜ生き残れたのか?

PHOTO BY高橋学

我々はあの日、すさまじいものを見た。

2022年3月5日、Fリーグディビジョン1・2 入替戦、第2戦。その前日、F2王者・しながわシティに1-2で逆転負けを喫していたF1最下位・ボアルース長野は、文字通り崖っぷちに追い込まれていた。長野がF1に残留するための条件は勝利のみ。引き分けすら許されない状況だった。

そんななかで迎えた試合は第1ピリオドを終えて0-2。見守る多くの人たちが長野の敗北を確信した。普通であれば、このまましながわが昇格を決めるだろう、と。ただ、この試合は“普通”じゃなかった。

「感情が揺さぶられる試合だった」

名古屋オーシャンズの主将・星龍太は、この試合を目て一言そうもらした。この言葉が全てを物語っている。長野を応援する人、しながわを応援する人、フラットに試合を見ている人、さらにはチーム関係者、運営スタッフ、メディア……全ての人が、等しく感情を揺さぶられたに違いない。それくらい、すさまじかった。

長野の勝利を信じ続けた人に対して、「奇跡」という表現は失礼かもしれない。もちろん、努力や日頃の積み重ねの結実であることは否定しない。だが、彼らの物語はあまりにドラマチックすぎた。

上位リーグのクラブが追い詰められる状況、点差、追い上げ方、タイミング、そして逆転勝利の立役者。思わず「これがフットサルだ!」と誰彼構わず興奮しながら伝えたくなるような、エモーショナルなゲームだった。

なおかつ、エポックメイキングでさえあるように感じた。

フットサルはおもしろい。そう信じる多くの人の心を救うような一戦だったに違いない。Fリーグは14年の歴史のなかで少しずつパッションを失いつつあった。フットサルに魅せられ、人生をかけて戦う人々に支えられてきたリーグではあるものの、このままでいいのだろうかと、漠然とした不安がフットサル界に充満していた。

そうした機運を打破し、フットサルはやはりおもしろい、まだまだこれからだと、勇気を与えるような試合。長野は、しながわという強者と対峙し、打ち勝った試合を通して、メッセージを投げかけた。「俺たちはできる」。困難と言われても関係なく、諦めず、戦い続け、結果をもぎ取る。フットサルが歩むべき生き様そのものだった。

あの試合を僕たちは「すさまじい試合だった」だけで片付けてはいけない。

長野の戦いには、もちろんしながわの戦いにも、フットサルの未来が詰まっていた。あの日、あの場所でなにが起きていたのか。当事者はなにを思い、戦っていたのか。今、その一端を紐解いてみようと思う。

奇跡の残留力。ボアルース長野はなぜ生き残れたのか?

チームを変えた山蔦一弘コーチ、驚異的なセーブを連発した守護神・山口友輔、現役最後のFの舞台で魂の咆哮を見せた主将・青山竜也。3人の証言者の言葉を、ここに綴っていく。

取材・構成=北健一郎、舞野隼大、川嶋正隆、高田宗太郎、本田好伸




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