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作成日時:2024.01.15
更新日時:2024.01.15

【F1ファイナルシーズン|ミックス/名古屋vs町田】寡黙な守護神が、リーグ制覇で初めて流したうれし涙。名古屋・篠田龍馬が語る「信じること」の大切さ。|上位リーグ第27節

PHOTO BY本田好伸

1月14日、Fリーグ2023-2024ディビジョン1ファイナルシーズン上位リーグ・第27節が行われ、名古屋オーシャンズとペスカドーラ町田が対戦。名古屋が2-1で勝利し、7年連続16度目のリーグ優勝を果たした。

2007年のリーグ開幕から、唯一のプロクラブとしての誇りを胸に、日本フットサル界の頂点に君臨する名古屋オーシャンズ。そんな“絶対王者”の肩書をもつ彼らは今シーズン、歴代で唯一優勝を逃した2016-2017シーズンに匹敵する苦難の1年を過ごした。

レギュラーシーズン終了時点で自力優勝が消滅し、首位・町田との勝ち点は最大で「7」開いた。それでもわずかな可能性に全力を注ぎ、仲間にポジティブな声かけを続けてきたのは、チーム在籍歴最長のキャプテン・篠田龍馬だ。

「もう二度と7年前の思いはしたくない」

誰よりも強い思いをもって臨んだ最終決戦では、タイムアップの笛と同時に喜びと安堵の涙を流した。

激闘を終え、篠田に話を聞いた。



「僕たちのゲームになる」というメンタリティで臨んだ

──優勝おめでとうございます。改めてシーズンを振り返って。

本当に苦しいシーズンでしたし、難しい1年でしたが、「自分たちがこのエンブレムを背負ってる意味」や「なぜここにいるのか」と初心に立ち返って、最後は戦えたと思います。

先ほど記者会見でも話しましたが、自分たちの力に疑問をもってしまうような時もありました。これだけの選手がそろっていても勝てないというのは、技術や戦術の問題だけではなく、そういう気持ち的な部分や自分を信じるというところも大きかったと思います。

でも、みんな今までの成果が認められてこのチームにいるわけで、そこは本当に自分たちの力や自分たちのフットサルに自信をもって、なおかつそこで全員が一致団結することは何よりも大事なこと。一人ひとりが仲間のために体を張ってプレーできれば絶対に勝てるという話を、このファイナルシーズン中もミーティングで伝えてきました。

それでも勝てなかったり、リードしていても失点を重ねて引き分けてしまったりもしましたが、それでも僕たちは自分を信じて気持ちを強くもって戦うしかない。

この前の取材でも「1回死んだチーム」という話があったんですけど、もう1回どころじゃなくて僕らは今シーズン、3回死んでいる。でも3回も死んで、最後の最後にこのチャンスが転がってきたということは、今日は町田の試合ではなく絶対に僕たちのゲームになるというメンタリティで臨みました。繰り返しになりますけど、絶対に勝てると信じ抜くことが大事だったし、信じられたからこそ勝てたんだなと今感じています。

──その自信や執念が、今日の左肩でのブロックにも現れていました。

もう無我夢中であんまり覚えてないですね(笑)。ミスは少ない試合になりましたけど、相手の攻めに対してフォーメーションを変えるのがちょっと遅れたり、危ない場面を作られてやられそうな雰囲気もありました。

特に最後のパワープレーは、町田もかなり冷静だったし相手を見て判断していて、相当練習したんだろうということも感じていました。うちも守ろうとどんどん後ろに下がってしまっている感覚があったので、1点取られたあとに「下がらずに、攻める気持ちをもって守ろう」という話をして、やり切りました。

──篠田選手のキャリアでも、こんなに多くのものをはねのけての優勝はもしかしたら初めてなのでは?

そうですね。僕、勝ったり優勝して泣いたことないんですけど、今日は泣いちゃいました。

大分に負けて、いよいよやばいと誰もが思ったし、正直、僕ですら試合が終わった直後はちょっと諦めかけていました。

でも試合のあと、いつも僕が最初にロッカーに戻るんですけど、その時は櫻井(嘉人)GMが一緒にロッカーに入ってきて。状況的にはもう発狂してもおかしくない状況だと思うんですけど、ぼそっと「まだ何があるか分からんよ」と言ったんですよ。僕はずっと名古屋で櫻井さんについてきましたし、予言じゃないですけど、耳に入ったその言葉がすごく響きました。全てを失ってもいいという気持ちになりましたし、やっぱりクラブを勝たせたい。優勝したいと僕のなかのスイッチが入りましたね。



他力でも、可能性を残すのは自分たち次第

──会見では、2016-2017シーズンに優勝を逃した年を経験したメンバーと、「あの時とは違う。優勝を逃すような状況ではない」という話をしたと聞きました。全員の前でそう言い切った意図や思いを教えてください。

あのシーズンは、自分のキャリアでも一番悔しかったシーズンで嫌な苦い思い出で、その時のチーム状況であったり、選手間の雰囲気や練習や試合の雰囲気を僕は鮮明に覚えているんですよ。だから今のチームの雰囲気とか、試合や練習に取り組む姿勢は、その年と比べても全然いいとわかっていました。なので11月のホーム戦で町田に負けて、自力優勝がなくなってしまった次の週にミーティングをして、その年を経験してる人間として「今のメンバーと、この取り組みを見ても絶対に同じことにはならない。信じてやろう」と伝えました。他力本願になった時にSNSにも書きましたけど、「他力と言っても、可能性を残すのは自分たち次第」なんだぞと。

勝ち続けていけば絶対にチャンスはある。巻き返す転機が絶対に来るはずだと僕は思っていましたし、最後の最後になってしまいましたけど、本当に他力じゃない状況になりました。このクラブに在籍していて他力で何かが決まるゲームをする経験はなかったですし、町田の結果を気にしながら試合するのも嫌で気持ち悪かったですが、現地で見てくださる方、ABEMAで画面越しに見てくださる方々にとっても、一番おもしろい展開になったと思います。

気持ちが高ぶる一方で、ここまでギリギリにならなくても、もっとできたのにって気持ちも反面ありましたけど、この瞬間を迎えられたのであれば、優勝するのは絶対に僕たちだと確信をもって戦うことができました。

──今年は日本代表の肩書きを背負ってこのクラブに来た新加入選手も多いですが、勝てないことに責任を感じたり、ジレンマを抱えながらシーズンを過ごしていたのではないかなと思います。彼らに対して、特に何か伝えたことはありましたか?

個人的に伝えたことっていうのはないし、僕は長く代表でやってきた選手ではないので推測にはなってしまいますけど、名古屋でプレーすることと日本代表でプレーすることは、トップレベルの選手であるという見られ方は同じでも、ある意味ではおそらく全然違うと思います。

“絶対王者”と言われる以上は、長いリーグ戦で「常に勝つ」プレッシャーを抱えてプレーをしなくちゃいけない。求められることももちろん増えますし、例えば(清水)和也に関していえば、他のチームでエースとしてやってきたものともやっぱり違う重圧も感じて、悩みながらこの1年やってきたと思います。ただ彼に関してはあんまり考えるといいことがなくて、今日も本当に大事な点を取ってくれましたけど、開き直ってゴールを取ることだけにフォーカスしてくれればいいんじゃないかなって。

最初からチームにフィットするのはなかなか難しいと思いますし、(金澤)空や(甲斐)稜人に関しても、リーグ後半戦になるにつれて出番も増えてきて、いいパフォーマンスを出してくれてたと思います。だからそこは、それぞれが葛藤しながら、目の前の試合を戦わないといけない難しさを絶対に感じていたはずです。

うまくいかないことと向き合いながら、それでもこの名古屋で精一杯やってくれた結果がこうやって優勝にもつながっているので、この1年の彼らの頑張りに感謝したいです。



大事なのは、失敗を失敗で終わらせないこと

──10連覇を逃したのもこの墨田で相手が町田でしたが、その時は乗り越えられなかった壁を今回は打ち破って、タイトルをつかみました。

相手が町田だったのはもちろん覚えていたんですが、言われてみれば場所も確かに。そこはあまり意識してなかったです。

ただ、その年を経験したメンバーで今残ってるのは、僕と安藤(良平)と八木(聖人)の3人しかいないんですけど、あの1年のことはこのクラブを去るまでずっと背負っていかないといけない。だから今回で7連覇で、その10連覇に行き着くチャンスを残すことができました。あんな経験はもう二度としたくないですけど、あの1年が僕らを強くさせたと思ってますし、だからこそ、「あの時のようには絶対にならない」という話ができました。

僕たちベテラン選手は、ここでタイトル落としたら、やっぱり来シーズンは(契約が)どうなるか分からない。それも含めて、負けたらもう全て失うし、今日みたいに勝てばこれから先につながっていく。「人生をかけて」という話もさせてもらいましたけど、本当に全てをかけて手に入れたタイトルになりました。

大事なのは、失敗を失敗で終わらせないこと。自分もいつまでいられるかは分からないですけど、許す限りは名古屋に残り続けて、これまでの経験を伝えて未来の糧にしていきたいです。



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