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作成日時:2024.05.26
更新日時:2024.05.27

【フットサル&サッカー、競技を超えたGK対談】内山慶太郎×松本拓也「サッカーにはゴレイロの技術が求められている」

PHOTO BY内山慶太郎,松本拓也,大西浩太郎

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対象:GK指導の本質を学ぶ 松本拓也 GKアカデミー


サッカーとフットサルのトップコーチによる、競技を越えたGK対談が実現した。

「技術と指導理論で右に出る者はいない」と現役Fリーガーたちもあこがれを抱く存在が、内山慶太郎氏だ。現在、フットサル日本代表のGKコーチを務める内山氏は、現役時代に日本代表で活躍し、スペインでもプレーした経験をもつフットサル界のトップ“ゴレイロ”コーチである。現在は代表チームだけでなく、自身のスクールで子どもたち教える他、トップ選手たちも内山氏の理論やノウハウを学びに彼の元を訪ねる選手も多い。

一方、サッカーのGKトップコーチである松本拓也氏は、高校を卒業後、ドイツへ渡り2年間プレー。20歳で引退してからは柏レイソルトップチームなどでGKコーチを務め、中村航輔、小久保玲央ブライアン、シュミット・ダニエルなど、日本を代表する選手の指導に数多く携わってきた。松本氏は、5月30日から、GK指導の本質を学ぶイベント『松本拓也GKアカデミー』を開催し、自身が体系化したメソッドや指導者のあり方など、日本中の指導者に向けて講義を行う。

「フットサルはサッカーに生きる」と言われて久しいが、それはGKにとっても同様だ。現在は世界のサッカーシーンでもフットサルのゴレイロのメソッドや技術がもち込まれ、各国代表のトップ選手が“フットサルの技術”を駆使している。

サッカーとフットサル、両競技の最高峰・最先端を知る2人が、競技を越えて議論した。

1対1の守り方はフットサルが先に行っている

──サッカーの松本さん、フットサルの内山さん、お2人はこれまでにもすでに親交があるということなんですが、 どういった出会いがきっかけで交流が始まったのでしょうか?

松本 内山さんのことは、フットサルのGKコーチの方ですごくマニアックな方がいるっていう情報を知っていました。 内山さんも、サッカーのGK指導者で1対1とかにマニアックな人がいると自分のことを知ってくれていたみたいで。

──お互いにマニアックなやつがいると認識していたんですね(笑)。

内山 共通の知人がいて、その人が(松本)拓也さんと一緒に当時僕がコーチをしていたフウガドールすみだの試合を見にきてくれたんです。その後ご飯に行って、カレー屋さんでお互いマニアックな話で盛り上がりました(笑)。

──サッカーとフットサルで競技が違うなかで、GKコーチとしてお互いに情報交換をしているのか気になるところなんですが、内山さんはサッカー界にどういうことを聞いたりしているのでしょうか?

内山 僕が拓也さんと交流させていただくようになってすごく勉強になると1番感じるのは、テクニックやトレーニングの話はもちろんですけど、 それよりも考え方の部分をたくさん学ばせてもらっています。これはGKコーチとしてもそうですし、指導者としてもです。物事の見方、捉え方がすごく勉強になるなと思っています。そこは直接コミュニケーション取らないと、なかなか本質を学ぶことってできないと思うんですよ。テキストとか、YouTubeとか、今たくさんありますけど、 そういうところからはやはり学ぶことのできない部分をたくさん学ばせていただいています。

松本 1対1とか守り方とかはフットサルの方が先に行っているというか。サッカーに共通する点が多くあったので、お互いに学ぶものがありますね。もちろんコートの大きさとかで違うところはありますけど、やはり最終局面のところは通ずるものがありますね。

──いま、「サッカーよりもフットサルの方が進んでいる」というお話がありました。実際 内山さんもサッカーをやられていて、フットサルに転向されて、技術的により細分化や体系化されていると感じますか?

内山 自分はフットサルに長く携わってきて、サッカーをすごく知っている訳ではないですが、フットサルの方が進んでるとは思っていないです。また違った視線がサッカーには新鮮だったかもしれないです。競技特性の違いで、例えば 「ゴールが小さいとこうやって守るんだるんだ」とか「角度が変わって似たようなゴールサイズになったら活かせるな」とか。進んでいるというよりは、感覚的にハマった部分があったのかなと思います。

──松本さんは具体的に「これはサッカーに生かせるな」と思うところはありますか?

松本 距離が縮まったときに、より細部のところはこれまで学んだ自分の仮説と比較する材料になりました。距離が縮まったときに、さらにそこからどういうテクニックを発揮するかは、 より細かいところまで内山さんが明確にしていると感じました。

「 この場面では、こういうシュートが飛んでこないから、こういう守り方します」みたいな、より細部のところが明確に形がありましたね。

──松本さんが昨年出版された著書『サッカーGKパーフェクトマニュアル』の1対1の項目で紹介していただいている技術で、フットサルのGKにもよく用いられる『L字』という足の出し方や、『フットブロック』みたいなものがありました。これはサッカーのGKではあまり見ないと思いますが、フットサルから参考にしたのでしょうか?

松本 僕は2018年にドイツに行きましたが、その2〜3年前から内山さんと交流するようになっていました。ドイツに行ってから、技術理論に名前がついてることを知りましたが、内山さんはそれより前に理論を語っていた。先に内山さんから名前のついた理論を学んでいたので、ドイツでも改めてそれを実感しました。内山さんのおかげで、より明確になった部分はあります。

──内山さんは現役時代にスペインでのプレー経験がありますが、スペイン人指導者の日本代表監督とかから話を聞いて思うのは、全てのアクションに言葉がついてるんですよね。 共通理解のために『フェンス』とか『ダブルニー』って言い方をしたりする技術もある。内山さんはこれらをどこでものにしましたか?

内山 言葉が整理されていることは、本当に先進国の素晴らしいところです。去年ブラジルに行った際にも感じました。指導する際に選択肢を共通理解をするのがスムーズですね。

──スペインでは、ただ縦に走ることにも言葉がついていたりしますからね。他にスペインでこんなプレーにも名前がついているのかと思ったことはありますか?

内山 名前が付いてないものがないことがすごいって感じですね。ブラジルではフットセーブも横方向と縦方向でセーブの名前が違う。選択肢をちゃんと明確に示すために、しっかりと言葉が整理されてるのは素晴らしいなと思います。

──松本さんがいかれたドイツはGKにおいては先進国ですが、現地でどう感じましたか?

松本 18歳で選手として2年間ドイツへ行って、20年後に指導者になりました。後に行った際に、言葉の整理には感銘を受けましたね。日本が作ってないとかじゃないんですけど、よりみんなが同じ方向を向いてる印象はありました。プレーの基準、言葉、国で同じ方向を向く仕組みがあったと感じます。

──フットサル日本代表の活動や、育成に携わる内山さんは基準を示す重要性を感じますか?

内山 育成の選手や指導者の方々のみんなが同じ目線でテクニックを見ることができので、それぞれの個性が出る。その素晴らしさを近年すごく感じてます。

──ズバリ聞きたいのですが、サッカーに向いてる選手、フットサルに向いてる選手、それぞれどういった要素があると思いますか?

松本 実は以前、サッカーの育成年代のあるGK選手をフットサル日本代表のキーパーキャンプに推薦したいと言われたことがあったんです。その選手の特徴は、抜群に反射神経が早いのと、動きの俊敏性、1対1が強いこと。その選手は身長が180㎝ないくらいだったんですけど。サッカーは空中戦があるので、トップのレベルにいくと対応できないこともあるかもしれないですけど、フットサルであれば可能性あるんじゃないかという話になりました。身長はどうしようもない部分がありますが、小さいけれど反射神経がいいGK選手が、フットサルで活躍できる可能性は大いにあると思っています。

──内山さんがサッカーからフットサルに転校した理由ってなんだったんですか?

内山 僕はこの身長だとサッカーで先はないと感じたのと、フットサルなら活躍できたので、活躍できる方でプレーしたいと純粋に思いました。

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──内山さんは現役時代から反射神経がものすごく早かったですが、サッカーをプレーされている時からそうだったんですか?

内山 反射神経やステップなど、速さは武器でしたね。フットサルで今GKが求められるのは、全てを速くプレーできる敏捷性。すごく狭いコートの中でハイインテンシティな競技なので、攻守でGKも速く関われるのは求められていますね。

──やっぱりサッカーでも敏捷性がある選手は大事になってきますか?

松本 そうですね、例えば日本で言うと菅野選手とか、朴一圭選手とかは瞬間的な動きが早くて、サッカーでももちろんそうですし、フットサルをやっても多分活躍すると思います。

──逆に、フットサルでは活躍できないけど、サッカーでは活躍できるみたいなタイプのGKはいますか?

内山 高校大学までエリートコースでやってきて、フットサルやってみたけど、やっぱりサッカーの方が活躍できるよねっていうパターンは何件かありましたね。これは能力というより、“距離の免疫”に問題があると思います。サッカーの距離感だったら自分の能力を発揮できるけど、フットサルの距離感、スピードになってしまうと、持ってるものが出せなくなってしまうっていう選手は一定数いると思います。

競技特性の違いなので、その選手がこう良いとか悪いとかではなく、単純にフットサルに向いてなかった。サッカーがやっぱ得意な選手なのだと思います。ゴールはフットサルの方が小さいので、どう考えても守りやすいはずなのに、バランスがうまく取れなかったり、左右に軸がブレることが多い。

──足元の技術はサッカーとフットサルでどっちの方が求められてるとかありますか?

内山 フットサルは足元の技術があるのは基本。5人目のフィールドプレーヤーと言われますし、GKのシュートもポイントになってきてる。競技特性としてGKもシュートを打てないと厳しくなってきているのが今の流れですね。

──内山さんはブラジルにも頻繁に行かれていますが、エデルソンとアリソンという、プレミアリーグを牽引する両チームのGKが、2人ともやっぱり足元の技術もあって、攻撃の起点にもなるっていうタイプじゃないですか。 ブラジルはそういうGKが出現しやすいと感じますか?

内山 フットサルでもブラジルのGKはもれなく攻撃が大好きですね。得点に関わりたい気持ちを持っているのは1つのカルチャーかもしれません。ピレス・イゴール、フィウーザ・ファビオ、黒本ギレルメもドリブルもシュートもうまいですよね。育成年代のブラジルの子供たちもシュートが大好きですね。

選手と同じ視点を指導者が持つ

──フットサル界のGKのトレンドはどんなことですか?

内山 トレンドは、いかにゴール下で強くプレーできるか。今のフットサルの戦術、戦略では簡単にカバーリングもさせてくれない。ゴールを空けずに、ゴールの下でリアクションで止めれる選手がトレンドです。攻撃では、GKの移動距離が増えてきて、 守備から攻撃への切り替えへの関わり、またその逆。場合によっては相手コートでプレーした後の撤退とか含めて、1試合あたり45キロくらい走るんですよね。スプリントの回数が30から40回。そういった走る能力、かなり体力的な疲労も増えてきているので、そういう選手が求められるようになってきてると思います。

なるほど。 松本さんもゴールキーパーのトレンドはキャッチアップされてると思いますが、 どうでしょうか。今どんなGKがサッカー界で求められていますか?

松本 1対1の ところで守り方っていうのはだいぶ浸透してきたんですけど、GKが距離を詰めれない時に、どうやってそのシュートに対して対応するか。あとは足を運べないけどその場で飛ばなくちゃいけないようなシュートの対応など。そういうのがサッカーでは多くなってきたんじゃないかな思います。

──最後に、自分が選手として実績がなければ、いい指導者になれないんじゃないかと思ってる人もいると思います。 もしかしたらちょっとネガティブに捉えてる人もいるかもしれない。名選手が名コーチになるのか、っていうテーマについてお2人の意見をうかがいたいです。

松本 やはり選手として感覚でなんとなく止めた選手が指導者になると、選手がそれをできないとき に詰まってしまう。工夫が必要になってくる。よく考えてる人が増えている、選手と同じ視点を指導者が持つことが大切だと思います。

──できない選手の気持ちがわかるのはメリット?

松本 僕も選手で活躍はできなかったけど、よく考えてきたし、その方がチャンスがあるのではないかと思います。

内山 僕はバックグラウンドは関係ないと思うし可能性はあると思う。それぞれがストロングとウィークを理解して、選手に寄り添う力があるか、自身の分析ができているか。経歴はまったく関係ないと思います。

──今回のアカデミーを受講して学ぶ価値はありますか?

内山 拓也さんの講義はすごく価値があると自信を持って言えます。GKの原理原則、指導者としてのあり方を学べるはず。

松本 最初に指導者としてのあり方、日本の現状、ドイツでのこと。2回目以降はより細分化して、どのようにトレーニングに落とし込んでいくのか具体的に4回に分けて説明していこうと思っています。マニュアルに沿ったことじゃない、エラーの例なども踏み込んで話したいですね。

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