更新日時:2025.03.03
「重みを感じられない選手がいた。それは自分の責任」名古屋“2回目の敗北”に直面した、篠田龍馬の悔恨の言葉【インタビュー】
PHOTO BY伊藤千梅
【Fリーグ】名古屋オーシャンズ 3-2 立川アスレティックFC(2月16日/パークアリーナ小牧)
2月16日、Fリーグ2024-2025 ディビジョン1 ファイナルシーズンが行われ、小牧ラウンドの第27節で名古屋オーシャンズと立川アスレティックFCが対戦。名古屋は3-2で勝利し、2位でリーグ戦を終えた。
2月14日に行われた第26節、首位・バルドラール浦安に3-6で敗れ、リーグ優勝を逃した“絶対王者”の名古屋。
失意のなか迎えた最終節、18試合ぶりに先発でピッチに立ったのは、在籍最年長GK・篠田龍馬だった。
「責任から逃げるつもりはない」
2016年以来、8年ぶり2度目の“屈辱”を味わうことになった篠田は、どんなことを考えながらこの1年のチームをベンチで見守り、どんな思いでこの最終節に臨んだのか。
試合後の取材エリアで、静かにその胸の内を語った。
責任から逃げるつもりはない
──久しぶりの先発になりましたが、試合を振り返って。
優勝がなくなったという状況で、気持ち的に難しい試合ではありました。ただ、それでも恥ずかしくない姿を見せないといけないと監督も言ってましたし、僕もその通りだと思ってピッチに立ちました。望んでいない立場での試合になってしまいましたが、自分たちが今日やらないといけないことは、最低限やったのかなと思います。
──どんな思いでピッチに立ちましたか。
リーグ前半戦にチームとしてうまくいっていなかった要因の一つに、自分の力不足があると責任を感じていましたし、10数試合出られなかったことは正当な評価だと思っています。
今日自分が選ばれたことについて特別なにか思ったことはないですが、ピッチに立つからにはまずはできることをやろう、と。最後まで「名古屋オーシャンズとして戦うため」に、力を尽くそうという気持ちでした。
──出られない期間、ベンチではどんなことを考えてましたか。
本来ピッチでチームを助けるのが選手の役目ですが、それが難しくなった時に「どういうことでチームを助けようか」というのは、毎日考えていましたね。試合に出場しなくなってからは、個人のことよりもチームの方に目を向けて、何か問題があったら自分が率先して解決しようと表に立ってやってきました。
それでも勝てなかったということについては、自分がピッチにいてもベンチにいても、その責任を背負わないといけない立場にあります。そういう意味でも優勝までチームを導けなかったことは本当に悔しいです。僕は2016年と今年の2回経験をしていますし、僕自身は、その責任から逃げるつもりはありません。
吉川とは、今までにないぐらい2人で話をしてきた
──吉川智貴選手は先ほどの記者会見で、今シーズンの問題・課題について、明確に感じていることがあるものの、後日話したいと。篠田選手の見解は?
吉川とは正直、今シーズンに関してはずっとこのチームの抱えている問題に対して一緒に向き合ってきましたし、今までにないぐらい2人で話をしてきました。彼が思っていることも考えていることも僕はわかっていますが、彼の思いについては彼から聞いてもらえればと思います。
僕の考えていたことについて話をさせてもらうと、このチームのフットサルのスタイルが変わることはシーズンが始まる前からわかっていたことで、イマノル監督も「すべてを変える」と宣言していました。それに対して今いる選手たちが合わず、順応しきれなかったのは、うまくいかなかった原因の一つとしてもちろんあります。
一方で、これまで何度か監督や選手が変わりながらも、基本は3-1の形で、前線に長いパスを入れてから短いパスをつないでゴールに向かうフットサルをずっとやってきて、マンネリ化してきていたのも事実です。実際、昨シーズンも今までと同じやり方を続けて、だんだんと圧倒できなくなっていることを肌で感じながら、僕も「名古屋のフットサルとはなんなのか」を考えながら戦っていました。
そういったなかで、多少痛みを伴ってでも一度それを壊し、「心地いいところから抜け出していこう」という、今シーズンだった。それはクラブの方針としてもあったでしょうし、それに基づいての監督人事でなので、決してイマノル監督だけの責任ではないと僕は思っています。
そして、想定以上に順応に時間がかかり、その痛みを大きくしてしまったことについては、選手にも責任がある。たとえば昨日の浦安戦のような、絶対に勝たないといけない試合でジョグをしている選手がいたのは、戦術どうこうの話だけではなく本当にありえないことです。
吉川がおそらく核心のところの話をしてくれると思いますが、この名古屋というクラブで戦うことの重みを感じられない選手の問題が大きいのかな、と。そしてそれを伝えきれなかったのは、ずっと在籍している僕も含め、経験値がある選手の責任です。
選手権での全勝は、義務
──自分にも責任や要因があるというのは、技術的な部分なのか、「ベテランとして」といった精神的な部分なのか、どちらが大きいのでしょうか。
正直、両方あるとは思っています。チームに新しいスタイルが浸透しきっていない状況で、後ろがどうにか踏ん張れなかったという点では、技術的なところもあります。
でも一番は、「いいフットサル」をしているだけではなく、その上で「勝つ」。それが名古屋オーシャンズだということを、浸透させられなかったことですかね。
勝つためには、時には「いいフットサル」を捨てなくちゃいけないときもあります。リーグ前半戦は特に「言われたことをやらないといけない」という考えが何よりも優先されて、「勝つ」という一番大事なことが、抜けてしまっていたように思います。
でも「いいフットサル」をするだけなら、名古屋の選手である必要はない。名古屋はどんな時も絶対に勝たないといけないチームなんです。
プロとして究極なことを言えば、「チームが勝てなければ、僕らも死ぬ」。そういう世界でやっているし、やらなくちゃいけない。そういった意識をずっと名古屋にいる僕を含めた選手たちが伝えきれなかったことに、自分の不甲斐なさを感じています。
──このあと、全日本選手権も残っていますが、篠田選手としてはどのような心持ちで臨みたいですか。
前に10連覇を逃してしまった時は、そこでチームとして気持ちが切れてしまって、全日本選手権もすぐに負けてしまいました。そうやって全てを投げ出してしまうことはあってはいけない。その一歩目が今日の立川戦だと思っていました。
なので、この全日本選手権は僕たちにとって、すごく……。ものすごく大事な大会になると思っています。選手権で全勝したからといって、リーグ戦の結果やタイトルが戻ってくるわけではありませんが、一つ名古屋として恥ずかしくない姿を見せないといけない。
それが名古屋オーシャンズの選手としての義務だし、それができないなら、今すぐこのクラブを出ていくべき。そういう思いで臨みます。