更新日時:2025.05.13
【女子日本代表】プレッシャーを跳ね返し、準々決勝で完封勝利!史上初のW杯出場まであと1勝。須賀雄大監督「次の大一番も、一緒に楽しんでいただきたい」
PHOTO BY伊藤千梅
【AFC女子フットサルアジアカップ2025】日本 2-0 ベトナム(日本時間5月13日/フフホトスポーツセンター)
5月13日、日本女子代表は中国・フフホトスポーツセンターでAFC女子フットサルアジアカップ2025・準々決勝を戦い、ベトナム代表に2-0で勝利した。
11日に行われたグループステージ第3戦で、今大会初の敗戦を喫した“なでしこ5”。
「今こそ前を向いて強い気持ちで」と須賀雄大監督もチームを鼓舞するなか、準々決勝はベトナム代表と対戦した。
直前のトレーニングマッチの際には4-1で快勝していた相手ではあったが、“負けたら終わり”のノックアウトステージで互いに慎重な立ち上がりに。
それでも開始3分、高橋京花が1対1の仕掛けからの左足シュートでオウンゴールを誘発し、日本が先制に成功。さらに、第2ピリオドでは24分に江川涼がネットを揺らしリードを広げた。
そして、失点要因の一つとなっていた相手のパワープレーを集中したディフェンスでしのぎ、2-0で試合は終了。日本は今大会4戦目にして初の完封勝利を収め、W杯出場権獲得まであと1勝に迫った。
試合を終え、目標の一つに王手をかけた須賀監督に、話を聞いた。
取材=伊藤千梅
編集=青木ひかる
この無失点勝利は、とてもポジティブに捉えている
──完封勝利でのベスト4進出、おめでとうございます。試合を振り返って。
ベトナムとは大会前の直前に試合をしていて、どんなチームかというイメージはもっていました。ただ、今回の大会全体に言えることですが、事前にもっていたイメージとはまったく異なる試合展開になりました。やはり公式戦になると、相手もフレンドリーマッチ以上の力を出してきますし、自分たちにもプレッシャーがかかってきます。そういった意味で、本当に1点を争うような難しいゲームになると予想していました。
実際にその流れのなかで、1-0という状況を恐れず、やるべきことをしっかりと続けられたことが、最終的に勝因だったと感じています。
──「イメージと異なる」というのは、具体的にどの部分でそう感じましたか?
今大会の一つのポイントとして感じているのは、日本ではファウルとして取られるようなホールディングに近いブロックや、マンツーマンの守備でのタッピングなどが、あまり笛を吹かれないという点です。
そのぶん、普段フリーでボールをもらえていたような場面で自由に動けなかったり、自分たちがボールを保持できていた状況でもキープできなかったりと、定位置攻撃がうまく機能しない場面が多くなりました。
逆に自分たちの守備面でも、セットプレーの際にいつも以上にブロックを警戒しなければならず、そうした部分が相手のフィジカルの強さと合わさって、試合が難しくなっていると感じました。
──第2ピリオドでセットの編成を組み替えていましたが、狙いを教えてください。
相手がピヴォに対して非常に激しくマークをつけてきていたので、その裏を突く意味でも、江川に少し下がってきてもらい、自陣で数的優位をつくりながら、そこから背後にエネルギッシュに飛び出していくような形を一度試してみたいと考えていました。
うまく機能すれば継続的に使っていこうと思っていたんですが、実際にその展開からゴールも生まれましたし、非常にいい流れだったと感じています。
──課題だったパワープレーの守備でも、今日は無失点に抑え切りました。手応えは?
ベトナムがどんなプレーをしてくるかというイメージは事前にもてていたので、それに対して準備はできていたのですが、想定以上に江川や松本直美にはかなり大きな負担をかける形になってしまいました。
とはいえここまで来ると、チームとして“最大瞬間風速”を発揮できるようなメンバー選考が求められますし、シチュエーションが変われば、出る選手も変わってくる。その局面に合わせて、パワープレーや守備のタスクを与えられた選手たちが役割を果たしてくれました。
またGKの井上ねねも、視界を遮られるような難しい場面でしっかりとセーブしてくれました。0に抑えられたことは井上本人にとってもチームにとっても大きな自信になったと思いますし、この無失点勝利はとてもポジティブに捉えています。
このチームはゲームよって、“ヒロイン”が変わっていく
──江川選手が4試合中3試合で得点を決めていますが、彼女はチームにとってどんな存在ですか。
このチームに関しては、誰か特別な選手がすべてをコントロールするようなチームではないと思っています。さまざまなキャラクターや素晴らしい個性をもっている選手がいて、ゲームよって、“ヒロイン”や“リーダー”が変わっていくチームです。
そのなかでも、今日の江川は特に印象的でした。パワープレーの守備では最後まで体を張り、コーナーキックの場面では顔面でシュートを止めるなどまさにチームが求めている“泥臭さ”を体現し、見ている人たちにも共感してもらえるようなプレーを続けてくれました。そのうえで、しっかりとゴールも生まれているというのは、本当に素晴らしいことです。
もちろん全員がそうしたチームスピリットのもとで戦ってくれていましたが、彼女のプレーはその象徴だったと感じています。
──前節の敗戦もあり、かなりのプレッシャーもあったと思いますが、ベンチから選手の表情をどう見ていましたか。
当然、プレッシャーがかかっているというのは試合前から感じていましたし、それは全チーム同じ状況だったと思います。ただ、だからこそ、プレッシャーのかかる試合でこそ、自分たちがやるべきことをしっかりとやり続けることが大事だと考えていました。
もちろんゴールを決めたいという気持ちは全員にあります。ただそれ以前にまず初期配置をしっかりと取ること、定位置攻撃ではチーム全体の呼吸を合わせて立ち上がりからリズムをつくること、守備ではボールが動いている間に素早く寄せ、トランジションのスピードを上げることなど、基本的な部分からゲームをつくることを意識していました。
そうした積み重ねによって流れを少しずつ自分たちのものにしていくマネジメントになりましたが、これだけの緊張感でもやるべきことをやり続けてくれた選手たちの努力が、今回の結果につながっていると思っています。
──まだ相手は決まっていませんが、次戦のポイントは?
矢印を自分たちに向けることが大事で、次の試合までの限られた時間でどれだけ体力を回復できるかが非常に重要です。
戦い方については、僕たちコーチングスタッフ陣がこの2日間でどんなプレーが有効かをしっかりと考え準備していくので、選手たちには、まずいかに良い状態で準決勝を迎えられるかにフォーカスしてほしいです。
──W杯出場決定まで王手をかけました。ファン・サポーターへのメッセージをお願いします。
自分たちは、“W杯出場”と“アジアチャンピオン”という明確な目標を掲げて戦っています。次の試合は、その目標に向けた非常に大きな一戦になると思っています。
みなさんのポジティブな応援は、間違いなく選手たちの力になっています。ぜひ次の大一番も、一緒に楽しんでいただきたいですし、一緒に戦っていただけたらうれしいです。ひき続き、応援よろしくお願いします。
■関連記事
- 【日本女子代表】アジアカップ兼W杯予選に臨む14名を発表!
- 【日本女子代表】松木里緒が負傷により離脱。池内天紀を追加招集
- 【日本女子代表】トレーニングマッチでベトナムに4-1で快勝!エース・筏井りさがハットトリックの存在感
- AFC女子フットサルアジアカップ中国2025がAFC公式Youtubeで配信!
<日本女子代表>インタビュー
- 須賀雄大監督
【映像/独占インタビュー】世界一を目指す指揮官が求める「誰でもできることを、誰よりもやる」の意味とは?
初のアジア制覇と、初のW杯出場権獲得へ。「歴史を変える野心と強い気持ち、覚悟をもって挑みたい」
“真面目”に戦い続けたベトナム戦で得たもの。「自分たちにはボールに対して5人で守るという秩序がある」 - 井上ねね
競技転向から6年、たどり着いた自身初のアジアカップ。「すべてを投げ打ってでもW杯への切符をつかむ」 - 伊藤果穂
「私がきっかけをつくる。仕事を全うする」日の丸を背負うキャプテンの責任 - 松本直美
MVPを受賞も慢心はなし。「献身的な動きでゴールを生み出す」 - 宮原ゆかり
日本最高峰のレフティが、アジアカップで結果だけにこだわる理由。「優勝は“マスト”です」 - 江口未珂
“スーパーエース”から“ウニベルサーレ”へ。「7年前は何もわからなかったけど……」 - 網城安奈
三度目のアジアカップで誓う、イランへのリベンジ。「日本の勝利のためにハードワークしたい」 - 筏井りさ
36歳・最年長のエースが目指す“一体感”。「横を向いて合わせるより、同じ目標へ向かう」 - 高橋京花
Fリーグ歴1年の“シンデレラガール”が示す希望。「地域リーグで人数が少ないなかプレーしてきた」 - 江川涼
エースとして、7年前のリベンジとW杯初出場を誓う「自分らしく、貪欲に得点を狙っていきたい」 - 四井沙樹
22歳だった若手は29歳の主軸へ「気負いせずに、落ち着いて、いつも通りに」 - 岩崎裕加
最年少のストライカーが、指揮官の言葉で得た変化。「自分がゴールを決めないといけない」