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作成日時:2025.08.18
更新日時:2025.08.27

【バーモントカップ優勝インタビュー】父・智久監督×息子・葵コーチ、浅野親子が語る“マルバの育成哲学”「今は何が一番大切なのかを見つけていく」

PHOTO BY伊藤千梅

8月15日から17日に行われたJFA バーモントカップ第35回全日本フットサル選手権大会は、マルバ千葉fc(千葉県代表)が初優勝した。

チームを率いる浅野智久監督は、2000年にmalva soccer schoolを開校してから25年の歩みを重ねてきた。2007年に茨城県代表として出場したmalva mito fcで悲願の全国制覇。その後、2011年にマルバ浦安、2015年にマルバ千葉で準優勝して以来、10年ぶりに“マルバ勢”の決勝進出を果たし、千葉県代表として初優勝を飾った。

そして今大会は、監督の息子である浅野葵もコーチとしてベンチに座った。自身もマルバで育ち、現在はFリーグ・マルバ水戸FCに所属する選手である。

親子で並んだベンチでの思いと、受け継がれていくバーモントカップの記憶を語ってもらった。

マルバ千葉fc優勝インタビュー

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10-3の決勝、その裏にあった“読みの力”

──優勝おめでとうございます!決勝戦は10-3と大量得点での勝利となりました。

智久 ありがとうございます!強い相手にもかかわらず、自分たちの実力を発揮していたことに驚いちゃいました。自分たちは準決勝もきつかったですし、決勝も厳しいかなと思っていましたが、すごかったですよね。僕までワクワクして、ベンチでうれしくなっちゃいました。

──小学6年生とは思えないような落ち着いたプレーでした。

智久 7番の佐藤篤志(下の写真で味方選手と喜んでいる選手/前回大会)と、10番の高越啓資(下の写真でドリブル突破を図っている選手/前回大会)は、昨年のバーモントカップでも試合に出ていたんですよ。7番はスタメンで、10番は途中交代でしたが、長くプレーしていました。

昨年は5年生で背も低かったので、体格の大きい相手に7番が抜かれたところから失点して、結果的に準々決勝で敗退しました。でもその経験を経て、こうして自分たちの代では優勝することができました。

──ズバリ、優勝した理由は何だと思いますか?

智久 どうなんだろう。毎年優勝できそうなんですけどね(笑)。でも今年の子たちは、試合全体を把握して「ここは危ない」「ここは集中する」といったポイントを感じる力を特にもっていたと思います。

ただ、それを習得するタイミングには個人差はあって、たとえば小学6年生で感じる力をまだもっていなくても、数年後にはもつことができる可能性があると思います。長男か次男かにもよりますし、成長の早さ、脳の回転の早さなど要因はいろいろあると思うので、今年の子たちは早くそこに到達していただけなのかな、と。

父と子が並んだ全国大会のベンチ

──今大会は親子で一緒のベンチに入ってみていかがでしたか?

智久 僕は元々とにかく勝ちたい人なんですよ。だから本来であれば「もっとやろう、いこう」と、子どもたちに対しての声掛けにも力みが出ていたと思います。

でも今回は葵がいてくれたので、毎日1試合1試合「この試合をどう楽しもうか」と考えることができました。彼とベンチに入ることも楽しみでしたし、一緒にやれてうれしかったです。

 僕は、うれしいとかはなかったかな(笑)。でも自分もこのチームで本当に優勝したかったですし、自分が小学校の時に戦っていた大会にコーチとしてまた来れたことは、すごく感慨深いですし、うれしいですね。

──浅野智久監督は、お父さんとしてはどんなひとですか?

 いつも一緒に戦ってくれる存在です。高校でも送り迎えをしてくれたり、試合前や点を取った時に声をかけてくれていました。ここにいても、海外に行っても常に連絡をとって、支えてくれていたと思います。

──監督としての浅野智久さんはどう見えていますか?

智久 どうなんですか。本当に(笑)。

 自分も今、コーチとしてスクールをやらせてもらっているので、声かけのタイミングや強く求める部分などは、いろんなコーチのことを見ながら研究しています。そのなかで、父は声かけのタイミングが一番うまいなと感じますし、もっと研究しないといけないと感じています。

智久 僕、それ上手なんですよ(笑)。

 伝えるタイミングや相手の感情を気にしないと、同じことを言っても子どもたちに響かないこともあると思います。試合になると熱くなる時もありますけど(笑)。今回の大会でも監督としてその部分を気をつけていると感じたので、自分ももっとコーチとして気にかけていきたいなと思いました。

──やはりそういった声掛けは意識されていますか?

智久 大切にしてますね。他のチームははっきりとやることが決まっているけど、マルバはやることをあまり限定していません。その分、子どもたちがどんな意図でそのプレーを選んだかを見抜いて、一つひとつのプレーに対して声かけをしています。

普通は通常の声かけだけど、トライしていない、考えようとしていない時は、よりしっかりと伝えています。それでも伝わらないならある程度語気を強めて伝えることも必要ですし、そこはタイミングが一番大切だと思っています。

伝えるタイミング次第で、3カ月トレーニングをしたよりもうまくなることもあると僕は思っているので、そこは意識していますね。



“わかりづらいうまさ”を育てる哲学

──マルバとして大事にしていることを聞かせてください。

智久 ゴールを取るために、自分が今一番何をしたらいいのかを見つけること。そのままシュートを打って入るならそれがいいし、ドリブルかパスか、とりあえず裏に蹴り込むのがいいのか……その時の状況にもよると思うので、今がどんなタイミングなのかを考えて判断をすることを求め続けています。

ただそれ以外にも、トライすること、見える動きだけじゃない部分や止まること、先に動くことなど、いろいろと求めていますね。

──求めることはたくさんあるのですね。

智久 チームのレベル、選手の特徴によって、求めるものは変えています。第10回大会U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022で優勝したチームはドリブルを求めていましたし、1本のパスの精度を求めていくことも、守備的なところを強化していく場合もあります。

マルバ出身選手の一人に上田綺世がいますが、彼を一番下のレベルくらいにしていきたいです(笑)。上田は抜群にうまいっすけどね。Fリーグ最年少得点記録をつくった浅野蓮と、今年の10番・高越啓資は、空間の認知や得点力以上に、瞬時の判断で適切な守備の選択ができる。目に見えるうまさに加えて、彼らみたいな“わかりづらいうまさ”をもっている選手を、より出していきたいです。

あとは、自分がやっていることを楽しいと思えて、もっと追求したいという子が増えればいいと思っています。好きなことを追求して、個人の特徴を発揮できる環境をつくっていきたいです。

──今の話を受けていかがですか?

 昔よりも求める量が増えた気がします(笑)。昔は目の前の1対1に勝つことや、1本のパスにこだわること、まずは自分のストロングを伸ばすことを大事にしていたけど、今はすべてを全員に求めるんですよ(笑)。なので今の子たちは大変だなと思います(笑)。

当時の自分が今の子たちのなかに入ったら、できないことも多いと思います。でも自分が中学校、高校生の時に求められてたことを、マルバでは小学生の時点でみんな求められているから、うまくなるよなと思います。

監督からの声掛けもあって「今は何が一番大切なのか」「今はこれを大事にしよう」とそれぞれが意識できているのかな、と。特に決勝のピッチではそれを発揮してくれたのかなと思います。

智久 いいまとめだったね(笑)。

観客席から見た景色が原点に

──葵さんが小学6年生の時は、バーモントカップに出場していましたか?

智久 葵の代が敗退した時、彼は観客席で応援していたんですよ。僕が彼を外して、ベスト16と準々決勝はベンチに座らせず、他の子をピッチに立たせました。

だからこそ、今回予選突破して一緒にベンチ入りした時は、当時のことも思い出して「うわ、すげえな」と思ってちょっとうるっときました。

 予選は試合に出ていたんですけど、自陣でボールを失って失点してメンバーから外されました。自分が幼稚園生の頃からずっとこの大会を観客席から見ていて、小学校6年生になって優勝を目指していましたが、残念ながら勝つことはできませんでした。

──バーモントカップは、悔しい経験だったのですね。

 観客席から見たあの景色は、今でも忘れられないですね。悔しかったし、うまくなろうと思いました。つらいことがあっても、あれを思い出せばつらくないと思えるような経験でもあります。

でも、それが成長するきっかけになっていますし、今の自分にも生きていると思います。選手としてもコーチとしても、あの敗戦は良かったのかなと思います。

──今回は5年生以下の子たちが観客席にいたそうですが、その子たちにはどんな声をかけたいですか?

 今Fリーグのマルバ水戸で一緒に戦ってる松本悠佑も、観客席で一緒に2試合を見ていました。それでも今彼は活躍しているじゃないですか。だから、その時ベンチに入れなかったからダメということでもないと思います。

観客席にいる子たちが、その景色を見て成長するというのは、マルバだからこそできる経験ですし、上から見る悔しさが今後につながると思います。

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