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作成日時:2025.12.31
更新日時:2025.12.31

【U-18日本代表】2036年に日本はW杯で優勝できる?育成ダイレクター・佐藤亮が語る、ブラジルに勝つ“タレント”をサッカー界からも発掘する仕組みづくり

PHOTO BY本田好伸

11月8日から12日にかけて、U-18フットサル日本代表候補のトレーニングキャンプが高円宮記念JFA夢フィールドで行われた。

A代表のコーチおよびフィジカルコーチとの兼任でフットサル育成ダイレクターを務めるのが佐藤亮だ。元日本代表でもある同氏は、現役引退後に指導者としてのキャリアを歩み、母校である帝京長岡高校でフットサルチームの指導を行うなど“サッカー選手”をフットサルとつなぐ手助けをしてきた。

その後、大阪成蹊大学ではチームを3年連続で日本一に導くなど、育成年代からトップカテゴリーをつなぐ年代の指導でも成果をあげてきた。サッカーからフットサルへの架け橋、育成カテゴリーからトップカテゴリーへの輩出。この2軸は現在、2036年のワールドカップ優勝を目標に据える日本フットサルにおける喫緊の課題でもある。

その両軸からアプローチを続ける佐藤氏に、フットサル育成の現在地を聞いた。

【関連インタビュー】なぜ今、サッカー界からのタレント発掘が必要なのか?高橋健介監督が語る日本フットサル育成論「知識だけでは、いずれ追いつかれてしまう」

<U-18フットサル日本代表・メンバーはこちら>



U-18年代は全国の地域を視察している

──佐藤さんはいつから育成ダイレクターを務めているのでしょうか?

今年の4月からです。これまで、フットサル指導者養成ダイレクターの前川(義信)さんが兼任されていたのですが、僕が育成ダイレクターを受けもつことになりました。今回の代表活動もそうですし、育成年代の選手たちが戦うリーグ戦や大会を視察したり、どういった環境をつくっていくかをオーガナイズするような任務となります。

──日々、育成のリサーチを担当されているわけですね。

メインは代表チームで、A代表のコーチとフィジカルコーチを務める活動と並行して育成年代も見ています。

──佐藤さんは、Fリーグで選手を引退後に指導者の道に進みました。母校でもある帝京長岡高校でコーチをされた後、大阪成蹊大学フットサル部でも監督を務め、大学選手権を3連覇するなど成果を出してきました。

僕自身は、そうした高校や大学年代を現場で見てきたキャリアがあるので、その関わりを現在の育成ダイレクターにも生かしています。この経験を発展させていくことが大きな仕事だと思って取り組んでいます。

──フットサルの育成年代はどのような現状でしょうか?

大前提としては上向きです。例えば、日常的にリーグ戦がある環境や、Fリーグの育成組織を中心として、フットサルを専門に活動しているクラブがありますし、小学生年代やそれ以前の年代から競技に取り組む選手が出てきていますから、かつてと比べても環境が向上していることは間違いありません。

そのなかでは、地域差が大きいことが課題の一つだと捉えています。特に関東はすごく充実していて、東京や神奈川などは日常的にそうした競争がある環境ですが、一方でそれ以外の地域はチームも選手数も多くはありません。

日常的に競争のある環境づくりを築いていくためのプランを考えているので、動かしていきます。

──U-18やU-19代表は、全日本U-18フットサル選手権大会が大きな選考の場になると思いますが、それ以外にもチェックしている活動はあるのでしょうか?

もちろん、U-18選手権の全国大会が一番にありますが、地域大会から視察しています。今年4月に活動を始めたので、それ以前に地域大会を行なっていた北海道を直接視察はできなかったのですが、それ以外の地域は概ねコーチングスタッフと分担しながらチェックしてきました。

そうした地域大会を踏まえた選手のデータベースがそろってきました。今は、地域を訪れることで、そこに携わる指導者の方々ともコミュニケーションを図りながら、データベースを拡充しているフェーズにあります。その中には、今回招集した日南学園高校の猿川(泰幸)選手のように、普段の主活動はサッカーをしているものの、フットサルのタレントにも期待しているといった選手もいます。そこは、今年になって特に取り組んでいることの一つですね。

──タレントをもつ選手がフットサルを選択肢にできる環境づくりが大きなテーマだと思います。ただ現状では、完全にサッカーだけの活動をしている選手の中から見つけることは難しいですよね。

やはり、地域大会を含めてU-18選手権大会に出てくる選手をピックアップしていくことになるので、日常にフットサルの環境が全くない選手を招集することはなかなかできません。そうした意味でも今考えているのは、もう一つ下の年代の選手に対して、フットサルとサッカーが交流できるようなイベント事業です。普段はサッカーを主活動にしているチームや選手にもっともっと参加してもらえるような仕組みにしていけたらと思っています。

サッカー選手が能力が高いわけではない

──逆に、フットサルだけをしてきた選手が直面する課題もあるように思います。10月にA代表が対戦したブラジルとの国際親善試合でも、アスリート能力といった部分などでも大きな壁があるように感じました。

まさに、コーチングスタッフの間でも痛感している課題があります。ブラジル戦は、相手のフィジカルレベルだけを見ても非常に高いことを目の当たりにしました。ただし、そこは勘違いしてはいけないとも思います。

──勘違いですか?

認識が偏らないようにすることですね。サッカーを主活動にしているからアスリート能力が高いとか、逆に、フットサルを主活動にしているからアスリート能力がないということではありません。今回の活動でも感じていることですが、フットサルを主活動にしている選手であっても、フィットネスが高く、なおかつフットボールのリテラシーが高い選手がすごく増えてきています。今、まさにそこに取り組んでいるところですので、サッカーのほうにも裾野を広げることによって、先ほど話したような日常の競争環境をどうつくっていくかに尽きると思っています。

例えば、普段はサッカーをしているチームがフットサルのリーグ戦にも参加できる仕組みだったりもそうですね。そうした裾野を拡充していくことで、いずれ、フットサルに触れてきた選手の中からタレントがある選手をピックアップしていく作業を精度高くやっていけたらと思います。そうしたアクションをサッカー協会内で考えています。

──帝京長岡高校はある種の理想系ではないでしょうか?

おっしゃる通り、一つのモデルケースだと思っています。U-12やU-15年代でフットサルに触れたことのある選手が高校年代でサッカーをトップレベルでやってきて、なおかつフットサル大会にも出場して、進路選択としてフットサルもあるという流れですよね。現在、代表に関わっている選手や、Fリーグ全体の選手のパスウェイ解析を行なっているのですが、どの年代でどういった環境にいたかという分析結果では、帝京長岡高校やU-15年代の長岡JYFC出身の選手が相当数いることは明らかになっています。ただしこれは、帝京長岡だからできたということではないと思います。

たまたまOB選手がフットサルをしていたり、自分のような選手がそこに関わっていたというタッチポイントがあったことがきっかけとしてあります。ですから、そうしたタッチポイントを意図的につくれたらと考えています。

──今回、初めてに近いレベルでフットサルに触れる選手を招集していますが、そういった選手のフットサル適性が高い、あるいはフットサルが合ってそうというのは、どういった部分で見極めるのでしょうか?

当然、技術的なものはありますけど、一番は“頭”の部分かもしれません。抽象度が高いかもしれないですが、次のプレーを予測できることや、普段のプレーを言語化できること、プレーや戦術の理解が早い選手などは適性があると思います。ただし、ブラジル戦後にスタッフの間で話していたのは、そうは言っても、そこだけじゃないよね、と。

──そこだけじゃない。

例えば、単純に体が大きいことや足が速いこともそうですし、そういったシンプルなフィジカルやスピードも当然、指導者が見ていかないと、どうしても選択肢や視野が狭くなってしまう危険性はあるかなということです。これまではフットサルの適性が高くはないと言われてきた選手の中にも可能性を見出していくような関わり方をすべきだという点も、我々としては課題感としてもっているということですね。

サッカーの強豪校などにも、可能性を秘めた選手がゴロゴロいると思います。去年のU-18代表で招集された中島啓太(帝京長岡高→大阪成蹊大)などもそうですね。サッカーでAチームに関われそうだったり、関わっているけど出られていなかったりする選手はたくさんいますし、そういう選手でフットサルで結果を出せる選手も多いですから。

──今回の活動を通して、選手の質について感じたことはありますか?

選手の質といいますか、彼らが日常的に置かれている環境がそのまま反映されている場所だなとは感じるので、その意味では、去年の活動よりも今年の活動のほうが全体のレベル感は上がっていると思っています。

新(竜兵)がフウガドールすみだでデビューしましたけど、一つ上の石井想一郎はもうリーグでバリバリ活躍していたりもします。そういう選手がこの年代から出てくるべきです。ですから、こうした活動を大いにきっかけにしてもらえたらうれしいですね。今回、猿川選手と同じように、フィールドプレーヤーでは、日本福祉大学付属高校の深谷(啓人)選手もフットサルにほぼタッチポイントがないなかで来てもらい、すごく前向きに取り組んでくれました。

彼らがまたサッカーの日常に戻った後、サッカーに生きることがあればそれもいいと思います。それを一つのフックにして、周りの選手がフットサルに興味をもってもらうきっかけとなることも2次的な効果として期待しています。ですから、こうした活動を継続していって、それがトップにつながっていくことがゴールだと思っています。



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