更新日時:2025.11.26
37歳、チーム最年長が決めた“ヘディング弾”。筏井りさ、夢の舞台でたどり着いたベテランの境地「必要な結果を残すことが仕事」

PHOTO BY伊藤千梅
史上初めての開催となったフットサル女子ワールドカップ。日本女子代表の初戦となったニュージーランド代表戦で、日本の最年長プレーヤーが存在感を発揮した。
筏井りさは、ゴール前に高く跳ね上がったボールに反応し、頭で押し込んみ3点目をもたらした。彼女がこれまで見せてきたことのないようなヘディングでのゴールは、長く向き合ってきた“フットボール”人生と、この舞台への思いを形にしたような一撃だった。
チームの中で求められる役割が変わっても、必要な仕事を淡々と遂行する。「自分の役割を全うする」。そう口にする37歳のベテランは、W杯で、その言葉を有言実行してみせた。
意外な形で実ったヘディング弾
史上初のフットサル女子ワールドカップがついに幕を開けた。日本は初戦のニュージーランド戦に6-0で白星を挙げ、大会の船出を飾った。
「まずは初戦に勝てたことがうれしい。みんなワクワクしながらも緊張して入っていて、会場の雰囲気もすごかった。日本からたくさんの応援が来ていて、本当に心強かったです」
サッカーからフットサルへと競技を変えたものの、「W杯」は、筏井自身が幼い頃から目指してきた夢の舞台だ。気持ちの昂ぶりを抑えながら迎えた初戦で、会場を沸かせてみせる。チームの3点目は、本人にとっても意外な形で訪れた。
「クイックリスタートでゴール前にボールが来るだろうなと準備していたところ、自分のところに来た瞬間、思わず頭で反応していました。触れてよかったです」
2-0で迎えた24分、中央から網城安奈が放ったシュートが相手に当たり、高く跳ねたボールがゴール前へ。フリーで反応した筏井が、頭で押し込んだ。普段から戦う女子Fリーグでは、ほぼ見せたことがないようなヘディングでの得点。それでも、彼女の動きには一切の迷いがなかった。
「ヘディングはなかなかないんですけど……後から考えると、ああいう浮き球に反応できたのはサッカーでやり込んできた部分だからかもしれないな、と。フットサルではゴール前での浮き球は多くないですが、シュートを決めるためにはどんな形にも対応できることが大事だと思います」
サッカー選手として長くプレーし、フットサル選手としてもキャリアを重ねてきた時間。それらが混ざり合い、あの一撃は生まれたのかもしれない。

5月に優勝を果たしたアジアカップは1stセットで出場していた。しかし、今大会の初戦は3rdセットでの出場。大会直前に行われたイタリア代表との親善試合は、出場時間も決して多くはなかった。
当然、この出場時間に満足しているわけではなかった。
「慣れもあるのでスタートで出たい気持ちもありますし、練習試合は貴重なので、もっと出たいという気持ちはもちろんありました」
だが、意識を変えた。
「この大会直前はもう、競争のフェーズではなく、一つのチームとして戦う段階です。私は、他の2人のピヴォと比べてどういうタイプで、どんな役割があるのか。出た時間帯や状況で何をするべきか、そこに集中するようにしました」
もともと、“完璧”を求めてきた選手だが、29歳でフットサルを始め、日本代表に選ばれ、そしてアジアカップを戦う過程で、彼女は自身が思い描く理想の形を変えた。
大会は中2日で行われ、勝ち上がれば最大で6試合を戦う。当然、チームの総力戦だ。それにみんなが初めて経験する世界最高の舞台の重圧もある。最年長として、どうチームに貢献するかを考えた。
「必要な結果を残すことが仕事。そこに全力で取り組みたい」
現在、37歳。年齢層の広いチームの中で、自分だからこそ見えること、考えられること、やれることがある。そうしてたどり着いた境地が、初戦の得点につながった。たとえ出場時間が長くなくても、求められる瞬間に絶対に役割を果たす。そんな意思が、あのヘディング弾に宿っていた。
次の相手は、FIFAランキング3位の強豪・ポルトガル。スピード、高さ、シュート精度。どれをとっても世界最高峰の相手だ。だが、筏井の目は前を向いている。
「日本が世界で戦える武器は献身性とハードワーク。恐れることなく立ち向かうだけです。今までに出したことのないような結果を、流れを引き寄せられる試合にしたい」
多くの経験をもつ筏井がもたらす存在感は、大会が進むほどに際立っていくはずだ。

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