SAL

MENU

作成日時:2026.01.29
更新日時:2026.01.29

「日本は、ブラジルに勝てるのか?」史上初の女子W杯決勝、現地で“世界”を目撃した3人の答え/筏井りさ×加藤正美×吉林千景【スペシャル座談会】

PHOTO BY伊藤千梅、本人提供

2025年12月、日本女子代表は史上初開催となったフットサル女子ワールドカップの準々決勝でブラジルに1-6で敗戦。そのブラジルは、異次元の強さで初代女王に輝いた。

日本にとって「ベスト8」は大きな成果である。一方で、ブラジル戦で体感した“世界との差”もまた、大きかった。あの敗戦をどう受け止めるのか。その差をどう埋めるのか。

12月7日、ポルトガルvsブラジルによる決勝戦のスタンドには、3人の当事者がいた。日本女子代表としてW杯を戦った筏井りさと、元日本女子代表であり、アルコ神戸の監督である加藤正美、10代の頃からスペインでプレーし、W杯開催に尽力した元日本女子代表の吉林千景。彼女たちは、それぞれの想いを胸に、あの日、あの試合を同じ空間で見届けた。

共にプレーしたことがある3人は、立場が変わった今でも「日本の女子フットサルを盛り上げたい」という思いを同じくして、キャリアを進めている。なぜ、あの場に行ったのか。世界との差とは何か。理想と現実とは何か。自分たちにできることは何か──。

それから数週間後、オンラインで再会した彼女たちは、1時間半にわたって女子フットサルの今を語り合った。3人が女子W杯で見たもの、それは想像以上に濃く、深かった。

取材=伊藤千梅
編集=本田好伸

※取材は12月24日に実施しました



「現地に行くかは迷った」(筏井)

筏井 キチ(吉林)は引退してからフットサルには関わっていくの?

吉林 どうかな。今は仕事で役職についているわけではないのでわからないですね。

筏井 指導者は興味ないの?

吉林 超ポンコツなチームになりそう(笑)。指導で現場に出るタイプじゃないと思う。チームの経営とかには少し興味ありますけどね。

加藤 スペインでも指導者はやらない?

吉林 やらないと思います。生活していくだけのお金を稼ぐのが大変そう。日本の監督はみんな仕事として成り立っているんですか?

加藤 お金をもらっている場合もあるけど、指導者1本ではまだ難しいかな。

吉林 スペインリーグの監督は給料をもらわないといけないので、サラリーマン監督みたいな感じです。選手も含めて、社会保険とかもチームがちゃんとしています。

加藤 その辺り、スペインは整備されているんだね。

吉林 私が最後に所属していたチームは全員プロ契約になったので、選手たちが時間通り練習に来るようにタイムカード制になりました(笑)。

加藤 すごくおもしろい(笑)。でも、プロ契約に整備されたことは素晴らしいことだね。

吉林 練習場に着いて、とりあえずみんな私服のままダッシュで指紋を押しに行く。

加藤 指紋だと、自分でしか押せないもんね(笑)。

吉林 これ、もう始まってる?

──まだです(笑)。話は尽きないですが、改めて本題に入りますね。みなさんはなぜ、フィリピンまで女子W杯の決勝を見に行かれたのでしょうか?

加藤 引退して4年が経ちますけど、選手として感じてきたものに加えて、指導者として、世界の動きや基準を自分の目で見て確かめることが、今の自分の役割かなと思っていて。現地に行って試合を見れたことは、本当に良かったです。

吉林 第1回大会は今回しかないので、とりあえず行っておきたいな、と。初めてのW杯で、世界がどんなふうに女子フットサルを盛り上げるのかを、自分の目で見たかった。

あとは、ここ数年日本のフットサルにはあまり関わってこなかったけれど、10代からスペインで一緒にやってきた海外の選手たちが、この大舞台でどういうプレーをするのか、どこまでパフォーマンスを上げるのかも見てみたかったからですね。

筏井 私は、準決勝を配信で見て、自分がピッチ上で肌で感じたスピード感を客観的に見た時に「決勝はやっぱり現地で見たい」と、その日に判断して行くことにしました。

──決勝戦の会場に筏井さんがいて本当にびっくりしました。

筏井 2人とは連絡を取っていたんですよ。

加藤 リーさんから「行こうかな」と連絡が来たので「絶対来たほうがいいよ!」と速攻で返信しました。「来たほうがいいよ!早く!」みたいな(笑)。

吉林 私、リーさんがチケット買えないとか言うから、サイトで空席を探して送りましたよね。

筏井 そうそう。チケットを買えなかったら意味ないじゃないですか。でもどこで買えるのか全然わからなくて、キチに相談しました(笑)。

──筏井さんを見て「さすが筏井りさだ」って思いました。

筏井 本当は、行くかどうかは迷ったんですよ。決勝は選手として自分が目指していた場所だから、どうなのか、と。負けたのに、俯瞰して見ていいのかという葛藤もありました。

選手として実際に戦ったブラジルはすごくレベルが高かったですし、負け方も不甲斐なくて、自分がやってきたことが何も通用しなかったという悔しい気持ちがとにかく強かった。敗戦後に、どうやったらこの差を埋められるかを選手みんなが考えていたし、自分自身も、今の立場で何ができるかをずっと考えていました。

でも、やっぱりブラジルは異次元に強くて、その肌感は一生味わえないと思った時に、もう一度、あの場所で確認しに行こうと思ったんですね。自分たちは負けたけど、これから目指すべきものは目の前にあって、それは自分の目で見なきゃわからないこともあるだろうなと思ったから、見に行くことを決めました。

なんて、かっこいい感じで言っていますが、マジで行くかどうか迷いました(笑)。

──そんな時に、2人が「絶対来たほうがいい」と(笑)。

筏井 2人がいたのはめっちゃ心強かったです。フットサルに対して思いがあって、アクションしている人たちがいっぱいいるなと思った時に、行きたいなと。助けられました。

加藤 キチも最初はW杯に行くのを迷ってたんだよね。

吉林 私が行くと決めたのも、日本がブラジルと戦う3日前くらい。

加藤 結果的には一番滞在期間が長かったけどね(笑)。

吉林 日本の試合も確実に見たいし、決勝も見たいから、必然的にすごく長い滞在に。

筏井 世界の選手が「女子W杯を開催しよう」という声明を出した時、日本の代表として関わっていたのは吉林選手ですからね。今大会があったのもこれまで女子フットサルをつくってきた人たちがいたからだし、キチがくるのかは気になってた。

加藤 あの動画の制作は実際どんな感じだった?

吉林 そもそもビデオをつくったらどれだけの人に見られて、どれくらいの効果があるかは、撮影していた日は誰もわからない状況だったんですね。それでもリスクをかけて、選手会がスペイン以外の国からも選手を呼んで、撮影クルーも呼びました。

だから、その活動をした選手会が本当にすごいなと思います。その中には、今大会に出場していたアルゼンチン代表の子(ジュリア・デュピュイ)もいたんですよ。彼女からはいつも「自分たちを信じてくれてありがとう」と言われるんですけど、「いやいや、あなたたちがすごい」って、私はいつも言っています。

筏井 W杯でもその時の選手会の人たちと会ってたよね。

吉林 彼女たちは今大会にFIFAの招待枠で来ていました。今後は選手会として、より世界中の選手の声を拾って、つなげていく役割をしていくみたいです。日本の選手も入れる、インターナショナルな選手会をつくっているところなので、みんなにも知ってほしいですね。

筏井 主催しているのは元選手の人たち?

吉林 選手としてプレーしていた人たちですね。選手会は、例えばチームとの契約書、給料、練習時間、負傷時の対応など、選手たちがアスリートとして活動するなかで疑問に思うことや納得できないことを支えています。私が入っていた数年前は、年間約80ユーロ(約14600円)を払うと、選手会が間に入ってチームやリーグと交渉するといった、選手を守る役割をしてくれます。

そこに入っておけば、チームからもらった契約書におかしいことがないかを選手会の弁護士がチェックしてくれるサービスがあります。日本はまだアマチュアリーグですが、だからこそ選手を守るためにできることはやったほうがいいとは思っています。

加藤 それは、良い取り組みだね。

吉林 スペインだけの活動から少しずつ広がっていますけど、まだ環境が整っていない国も多くあるので、そういう国の選手の声をもっと拾っていく活動をするんだと思います。

■選手会公式サイト
worldfutsalplayers.com

■Instagram
https://www.instagram.com/ajfsf_internacional?igsh=cjE1ZmFtOTJsaXJu

<選手登録はこちらから>



「世界は、今の日本のリーグと比べて全然違う」(加藤)

──決勝戦はどんなところに注目していましたか?

加藤 試合の流れのなかで監督がどのタイミングでタイムアウトを取っているか、ベンチスタッフがどのように関わり続けているのかなどを見ていました。

例えば、決勝戦はポルトガルが第1ピリオドの早いうちにタイムアウトを取りましたが、「この流れで、このタイミングでタイムアウトをとった意図はなんだろう?」とか、そのようなところを読み取っていました。

あとは特にスペインvsブラジル、ポルトガルvsブラジルの2試合は強度が高くて、プレースピードや球際、技術も含めて、今の女子Fリーグと比べてレベルの差を感じました。

筏井 私は全体も見ていたけど、シンプルに自分で感じたスピード感を外から確認していました。

──吉林さんはあの強度を普段から体感していたわけですよね。

吉林 あのスピード感は19歳くらいで初体験しましたが、私はただラッキーガールだっただけですね(笑)。でも、慣れだと思いますよ。4年に1回だけトップレベルの選手と対戦するのと、1年間スペインリーグでプレーしてから戦うのとでは全然違うと思います。

私はもともと、日本人の中でもフィジカルが低いので、そこでは海外の選手に絶対に追いつけない。(ブラジル代表の9番)エミリーが目の前に来たら、もう死亡案件(笑)。だからこそ、そうした選手たちの中でどう戦うかみたいなところは大事にしていました。

加藤 キチは推しがいたよね。スペインの7番(アレハンドラ・デ・パス・ゴンサレス)だっけ。

吉林 そうそう、あんまり足が速くない選手。

筏井 でもあの選手はパスがうまかったよね。シュートも左右の足で蹴れるし。

加藤 準決勝のスペインvsブラジルはキチと一緒に観戦しましたが、選手の特徴や背景を教えてもらえました。7番の選手は、スペイン代表の中でもフィットネスレベルは周りに比べると優れているようには見えなかったけど、彼女の良さをキチから改めて教えてもらいながら観戦しました。その世界でプレーしてきたキチの経験値は貴重だよね。

吉林 W杯はその国のストーリーを知っていると、よりおもしろいと思います。特にスペインは悲惨な状況で、直前で怪我が相次いで3人も中心選手が抜けていたんですよね。

あとスペイン代表の6番(サンツ・ナヴァロ・マリア)は昨年、体調を崩していて、リーグも出場できていない状況でした。でも今年ドクターからOKが出て戻ってきて、W杯に出場できた。そういう背景を知っていたら試合の見方も少し変わりますよね。そんな感じで、観客席でワイワイ、ガヤガヤしながらみんなで見ていました。

それにしても、あれは有料級の解説だったな(笑)。

加藤 間違いない。

筏井 オンライン配信でやれば良かったね(笑)。



「ブラジルには本当、手も足も出なかった」(筏井)

──少し、日本のブラジル戦の話を聞いてもいいですか?

加藤 私も、ブラジル戦でリーさんがどう感じていたのかはすごく気になります。

筏井 私、何回かあの試合の映像を見て、整理した状態でこの場でも話したいと思っていたんだけど……実はなかなか見る気がしないんだ、珍しく。

だから感覚的な話にはなるけど、自分が国内で準備してきたことを出そうとしても、まずディフェンスに追われたよね。こっちは必死なのに、相手のボールの持ち方は余裕そうだし、とにかく距離を詰められない。でもそうするとシュートレンジは広いし、ピヴォ当てで背後に走り込んでくるし、ドリブルの選択肢もあるから、悪循環。

本当、手も足も出ない感じだった。必死に守備をしていて、気がついたら相手の肩が顔にドーンってぶつかって、脳震盪になりそうだったし(苦笑)。

あと自分がボールを受けた時、今までは多少キープできたけど、ブラジルは強くて本当に何もさせてもらえなかった。悔しいけどね。

加藤 なるほど。

吉林 ブラジルの選手って分厚くないですか?

筏井 分厚いね。めっちゃ筋トレしてんなって思った。コンタクト用の体が出来上がっている感じ。

吉林 ポルトガルは細長系で、ブラジルは強いんだよね。

──加藤さんと吉林さんは見ていてどうでしたか?

加藤 立ち上がりのスピード感が日常と異なったことから、選手たちがそのスピードにアジャストするのに時間がかかっていたようには見えました。後半はある程度スピードに慣れたなかで、ピヴォ当てされた後も頑張ってついていくこともできていたのかな、と。中々日常でそのような環境をつくることは難しいかもしれないですが、近づける努力が必要だと感じました。

また、戦術の差はあまりないように感じたけれど、大きな差は、個人にあると感じました。ブラジルは、パススピードやコントロール、コンタクトなど個人技術・戦術が日本に比べて高いと思います。

吉林 まずブラジル戦を見ていて思ったのは、いつもやっていることを“やらなくなっちゃう”選手が多いなと思いました。

国内のリーグにいると、当たり前に強いチームから選ばれる選手が多いじゃないですか。だからこそ、代表選手たちは圧倒的に相手が強い状況下でプレーする試合が年間で1試合もないケースがあります。なので、そういうシチュエーションになった時にどんな振る舞いをして、どんな戦い方ができるのかは、選手や指導者が考えたほうがいいことだと思います。

加藤 そうだね。日常のリーグ戦のレベルアップも必要なのかもね。

吉林 今大会のベスト4に進出した国は、多くの選手がヨーロッパでプレーしています。今回の日本代表メンバーを見た時に、ヨーロッパでプレーしている選手が、GKの(須藤)優理亜ちゃんしかいなかったのも、世界の舞台で戦う上で一つ大きなウィークポイントになってしまったのかなとは、日本の試合と準決勝、決勝の試合を見ていて感じました。

あとは、フットサルは40分をいかにマネジメントして戦うかというスポーツ。タイムアウトがあって、ファウルを5回したら第2PKを与えてしまうという、ある程度のルールがあるなかで、これはすごく個人的な意見ですけど「専門職」みたいな枠が14人の中にあっても良かったのかなとは思いました。

ブラジルにはパワープレーのディフェンスの専門職とか、コーナーキックやフリーキックの専門職がいますよね。それしかできないけど、それは誰よりもできるみたいな選手。W杯のような一発勝負の戦いではそういう選手を重宝するケースを私は見ているし、男子のW杯でもそういう選手がいるのは見ていました。

あくまでも個人的な考えですが、フィジカルやレベルの差がすごいと最初からわかっているのであれば、そういう考え方もアリかなとは思います。

筏井 おもしろい。専門職か。

吉林 ブラジルのパワープレーの守備は全員職人じゃないですか。4人の職人が絶対ゴールを割らせない覚悟で立っている。そりゃあ、点を取れないですよね。

おそらく彼女たちは攻撃のパワープレーも同じようにカードを持っているんですよね。フリーキックもセットが決まっていて、型が何個もある。でもそういうのは、日本でも詰めていけばできる部分だなと思います。

筏井 でもあの強度感は、なかなか日常で経験できないよね。

吉林 そう、だから(グループステージ第2戦の)ポルトガル戦の3失点目を与える直前の場面で、パワープレーのユニフォームを着た選手がキックインでボールを蹴るとかは、ありえないじゃないですか。それは本人のミスではなく、普通ではやらないということに全員が気づくべき。日常での危機的状況の少なさが、あの場面で出たのかなとは思います。

筏井 それはアジアで戦っている時から自分も思っていて、普段やっていない状況とか、やったことのない役割に戸惑うことも多いから、本当に経験値は大事だなと思う。

そうすると、日本のリーグで強度の高い試合ができるチームが増えなきゃいけないかもしれないし、全体的なレベルも上がらなきゃいけない。W杯で優勝するのであれば、4年後を見据えて代表活動も増やさなきゃいけない。そういうのはすぐに変わることではないけど、やっていくしかない。

でも私は選手の立場だから「活動を多くしてほしい」「環境を良くしてほしい」と言っているだけじゃ、何も変わらない。そういうこともわかった上で、自分が何をしなきゃいけないのかなというのは、最近は特に考えています。

──もし、加藤さんが代表監督だったらと考えることはありますか?

加藤 代表監督という視点ではなく、一人の指導者としてであれば、あの試合における自分なりの戦い方を考えることはありますね。

──結果論になってしまいますが、勝つイメージはできますか?

加藤 うーん、そうですね。そもそも監督にはそれぞれの哲学や表現したいフットサルがあって、その時の目標や目的、そうした背景からメンバーや戦術が定まってくると思いますね。なので、100人の指導者がいれば、100通りの考え方があるので、その前提で聞いてもらえたらと。

私が指揮を執るとしても当然、そもそものメンバー選考から異なるとは思います。実際、女子Fリーグを戦う選手たちのパフォーマンスはよく理解しているので、ポルトガルを相手に勝つイメージをつくるところまではできました。もちろん、その上で大会の環境やその時々の選手のコンディション、相手の戦い方など、やってみないとわからない部分ばかりですが。

ただ、ブラジルに勝つイメージをもつことは相当に難しいなとも感じました。その上で、もちろんやるからには勝ちにいくと思います。

──やはり簡単じゃない、と。

加藤 日本はマンツーマンの守備でしたけど、実際にW杯での対戦を見ていくなかで、フィクソの選手がもっと個人で戦えないと難しいなとは感じました。もちろん、その他のポジションの選手もそうですが、個人の守備の能力を上げる必要があると感じています。

また、試合の流れや相手との力の差から守備のシステム自体を変えるのか。今大会での対戦があったからこそ、また違った選択肢が出てくるのかなと思います。

──アルコ神戸からW杯に出場した高橋京花選手のプレーはどうでしたか?

加藤 みんながどう感じたかはわからないですけど、ブラジル戦のプレーを見て「戦いにいったな」と思っていて。彼女の特徴である前を向いてドリブルを仕掛けるという、自分ができる最大限の力を発揮して、ブラジル相手に挑んでいたように見えました。

どこのポジションでも、まずは目の前の相手と戦いにいかないと勝てないと思っていて、そこにチャレンジしていることを私は感じました。本人は帰ってきてから「ブラジルは足が長くて、それを日常の中でイメージして成長したい」と話していました。帰ってきてから、ずっとドリブルとシュートのトレーニングをしていますね。

筏井 すごいな。

加藤 うん、全体練習が終わってからも、自主練をしている姿を見かけるよ。

筏井 そういう選手がいることもそうだし、前を向けるドリブラーは貴重だよね。

加藤 本当に貴重だと思う。

吉林 でも、今回はドリブラーを生かしてあげる選手も少なかったなと思いました。1人で仕掛けるだけだとつぶされてしまうじゃないですか。

加藤 本当にそうだよね。攻守ともに個人で勝負するよりも、より連係の部分で勝ち筋を出していく必要はあるなと思う。

あとはブラジルにはエミリーみたいな大型のアラがいるから、本当にブラジルに勝とうと思ったら、そこに対抗できるアラがいないといけない。今後はフィクソくらいのディフェンス力をもったアラも輩出していかないと、対抗するのは難しいなと思います。



「スペインでは、監督と選手が余裕で喧嘩する」(吉林)

──ブラジルは12番のアマンジーニャのような小柄な選手も際立っていました。

吉林 彼女のプレーはここ10年間で変化していますね。12年前の世界大会の決勝で、延長戦で決勝点を決めて、ユニフォームを脱いで振り回してイエローカードをもらっていたのが私の中の最初の記憶ですけど(笑)。その時はまだアタッカーの役割をしていました。

──そんなことが(笑)。

吉林 そうなんですよ。でも最近はあまり走っている姿を見ない。試合の強度が上がったら走るし、走れるけど、普段は歩いてプレーしているんじゃないのかと思うくらい。

フットサルはフィジカルスポーツですけど、フィジカルに劣る選手は、考えてプレーすることのほうが重要になってきます。フィジカルはやれば伸びるし、みんなトレーニングに力を入れますけど、それだけでは世界の選手に届かない。もう少し考える部分のトレーニングをしたほうがいいのかなとは、アマンジーニャの成長過程を見ていてすごく思います。

──日本人選手はアマンジーニャを目指せますか?

加藤 アマンジーニャは性格にも強さがありますよね。味方に要求したり、思っていることを言ったり、そういうのも含めてブラジルで育ってきたことは大きいのかなと思いました。

吉林 性格はめっちゃあると思います。海外のチームあるあるだけど、あの人たちは審判も含めて試合をコントロールしようとするんですよ。そういう姿勢は学ぶべきだなと思う。

加藤 ブラジルのファーストセットも、アマンジーニャとエミリーがゲームを引っ張りながら、ベテランのキャプテンがうまく2人をまとめつつ、若手のピヴォが要求に答えながらも、自分がやりたいことをやる意思の強さがある。そういうことができるのもブラジルの選手の良さで、メンバー構成もそういう部分を含めてちゃんと成り立っているなと、決勝戦を見ながらすごく思いましたね。

吉林 スペインのチームは、ミーティング中に監督と選手が余裕で喧嘩しますからね。キレてどっちかが帰ることも普通にあります(笑)。そういうコミュニケーションが良いかどうかは置いといて、伝えるということに関してはしっかりやっていると思います。

筏井 日本人は素直というか、従順さがまずあるよね。

吉林 日本人選手が海外で戦っていくとしても、ぶっちゃけ、プレースタイルはあまり問われない気がします。言葉を話せなくてもコミュニケーションを取ろうとするとか、自分の意思をきちんと伝えるとか、そういった人格を問われる気がする。

加藤 主張したり、自分たちでゲームをコントロールしたりリーダシップが取れる選手が、今の日本には少ないと思っています。私が現役の頃は先輩後輩関係なく意見を言い合い、喧嘩をすることもあったような……(笑)。今はみんなが同じ色に染まって、それぞれの色みたいなものが少し消えてしまっているのかなとも思いますね。

筏井 どうやったらちゃんと主張したり、自分の色を出せたりする選手になれるのかな。そもそもフットサルをもっと勉強しなきゃいけないし、まずは考えることが必要だよね。

吉林 フットサル業界以外の友達は、たくさんつくったほうがいいなと思います。

筏井 なるほど(笑)。そういうところにもヒントがあるわけだね。

吉林 私はちょっと、基本的なところがずれちゃっているのかもしれないですけどね。そういえば私、フットサルを始めてから8年くらい、代表や選抜チーム以外で日本人監督とやったことがなかったんですよ。最初に教えてもらった監督が日系ブラジル人で、その後すぐにスペインだし。

加藤 それすごいね。

吉林 だから、練習中に監督に文句を言っちゃうとかも普通の感覚だった。

筏井 キチは監督の言っていることがすべてではないとか、従うだけじゃ勝てないとか、いろんなことを考えて行動してきたと思う。そういう選手がもっと増えるといいよね。日本人監督からしたら、選手たちがバンバン意見を言い始めて大変かもしれないけど。

加藤 いいね。むしろそれぐらいでいいと思う。

筏井 確かに正美は選手の話を聞きながらディスカッションできるもんね。

加藤 ブラジルの選手とかも、喧嘩というより、そういうことだと思うからね。指導者としては、そのような意見を言える環境をつくることも大事だね。また、指導者もそれに答えられる知識やマネジメントも求められると思う。

筏井 選手たちも言われるだけじゃなくて考えながら進めるか。ピッチの中のこと以外でも、プロじゃないとか、チームからお金をもらえないことに対して文句を言うだけでなく、自分で何ができるかを自分自身に問いかけられるようにならなきゃいけないよね。

加藤 本当にそうだと思う。少し広い話にすると、クラブの運営もリーグの状態も、この環境にいる人たち全員が、そういう世界を求めながらやるのが大事だと思う。

吉林 日本人はアマンジーニャになれるか?というスタートだったけど、性格とかコミュニケーションは学んでいこうっていうことだね(笑)。ピッチの中でも外でも、選手も監督もクラブのフロントも、今の経験を次につなげていくことで、アマンジーニャになれるというか、日本がブラジルに勝つための道に続いていく、ということでいいかな?

加藤 まとめをありがとうございます(笑)。

──では改めて伺いますが、ブラジルに勝つ、つまりW杯で優勝するためには?

筏井 大会が終わって思ったのは、ぶっちゃけここで戦えるようになるにはスペインに行くしかないのかなって。世界を目指すとはそういうことだな、と。「今から4年か……」とリアルに想像して、すごく葛藤しました。年齢的にはかなり厳しい状況ではあるので、私にできることを考えていきたいですね。

吉林 いいですね。若い時に海外を経験するのはおすすめ。

筏井 プレー環境だけじゃなく、育った環境も違う。今回、生活がかかっている選手たちの「W杯のタイトルを絶対に取る」という熱量や貪欲さを感じた。賞金もあるだろうしね。

自分たちはそういう選手と戦わなきゃいけないから、その世界を体感できる機会ができるだけ若い頃にあって、そういう海外挑戦が当たり前になっていくことが大事ですよね。

──サッカーでは、女子も海外挑戦が当たり前になりましたね。

筏井 そうですね。もちろんサッカーも魅力的ですけど、フットサルにもW杯があることをいろいろな人に知ってもらって、そこを目指すアスリートを増やしたいですね。だから私は、小中高年代のうちからフットサルを目指す子を増やすアプローチをしていきます。それで、正美のところに早めに送り込みます(笑)。

加藤 ぜひ!送って(笑)。あとは、さっき話していた日常の競技力を高めていくこと。レベルにもよりますが、U-15やU-18の男子にも勝っていける水準に、選手たちを引き上げていかないといけないと思っています。アルコには若い選手が多いので、彼女たちが次のW杯を目指せるように、日常を変えていけたらと思います。

筏井 そこは本当に大事だね。

吉林 今の女子代表は、A代表しかないですよね。だから、代表チームに若い選手も多い。10代や20代前半の選手たちが、そのまま競技を続けられるようにサポートできる仕組みは大事ですよね。今後の可能性を信じて代表に呼んでいる選手たちが、何人残ってくれるのか。育成がすべてだと思うので、関わっている人には頑張ってほしいと思います(笑)。

筏井 キチもね(笑)。でも吉林には、会いに行けば直接アドバイスをもらえるから。

吉林 そういうことであれば、なんでもやりますよ。

──みなさん、今日はありがとうございました!

吉林 やばい、もう1時間半も経っている。みんなおしゃべりくそ野郎だ(笑)。

加藤 え、やばいよね。こんなに話しても、まだまだ話せる。

筏井 永遠に終わんないよね。

吉林 オンラインじゃなければ、うちらのおもしろさがもっと出せたのに。

筏井 そうだね(笑)。またの機会に第2弾をやれたらいいね。

※なお、本座談会の内容は、総分量の半分程度を割愛しています

↓【完全ガイド】フットサル女子W杯↓



▼ 関連リンク ▼

  • AFC フットサルアジアカップ インドネシア 2026 完全ガイド|試合日程・結果・順位表|試合会場
  • 【フットサル日本女子代表】FIFAフットサル女子ワールドカップ フィリピン2025 完全ガイド
  • Fリーグ2024-2025 試合日程・結果/チケット情報/放送情報
  • 【大会・試合情報】Fリーグ・JFA フットサルリーグ戦&カップ戦まとめページ

▼ 関連記事 ▼