更新日時:2022.04.01
「原理原則」を知れば、フットサルは必ずうまくなる。【第1回リアルFリーグ大学・福田レポート】
PHOTO BY福田悠
2月23日(水・祝)、神奈川県横浜市の体育館にて、ABEMAFリーグ中継で解説者を務める元フットサル日本代表・横江怜氏と実況・福田悠によるイベント「リアルFリーグ大学」が開催された。
ABEMA Fリーグ中継のハーフタイムコーナーとして人気を博した「Fリーグ大学」がリアル版で復活。横江氏の理論と経験に裏打ちされた講義&クリニックは熱量満載、充実の4時間となった。今回は主催者の一人である私、福田悠がイベントの模様をレポートとしてお届けする。
取材・文=福田悠
協賛=ABEMA、OAKLEY
ABEMAのコメント欄から実現した人気企画!
Fリーグを中継するABEMAのハーフタイムではこれまで様々な企画を行ってきたが、そのなかでも特に好評を博したのが「Fリーグ大学」だ。毎回一つのテーマを取り上げ、レジェンド解説陣が大学教授さながらに講義を行う。
横江氏の戦術・技術解説は「論理的で分かりやすい!」と話題となり、コメント欄では「クリニックとセットでリアルFリーグ大学を開催してください!」という要望も多数届いていた。今回は、そうした声に応える形で開催に至った。
コロナ禍でなかなか開催できずにいたものの、ABEMA Fリーグ中継関連では初のリアルイベントとなった。
上達に必要なものはフットサルの原理原則
プログラムは講義2時間+実技(クリニック)2時間の計4時間。施設内の一室で、まずは座学からスタートした。
今回、横江氏が大きなテーマとして設定したのが「点を取るためにDF側の原理原則を知る」こと。フットサルは点を取り合う競技であり、ただ守っていたのでは試合に勝てないため、なんらかの形でゴールを奪いにいく必要がある。その際に重要になるのが「DFの原理原則」ということだ。
他の多くの球技でも同様だが、攻撃と守備は常に表裏一体。「守備側はDFラインの裏を取られるとピンチになる→攻撃側は相手の裏を取れるとチャンスになる」といった具合に、守備側の原則を知るからこそ、その穴や弱点を突くことでより効果的な攻撃が可能になる。
今回の講義内容はすべてこの原理原則に基づいて解説がなされた。守備側の目線を話の起点にしながら、横江氏があらゆる局面における攻略法を指南していく。本レポートでは、その中から、「フェイク」に関してご紹介しよう。
知っているようで知らないフェイクのタイミング
冒頭で横江氏は「“フェイク”というのは極論存在しないと思っていて、フェイクではなくて正確には“キャンセル”なんだよ、ということを初めに伝えたいと思います」と話した。「フェイク」(fake)とは、日本語に訳すと「偽物」。相手を騙すフェイントや所作を意味し、フットサルにおいてはパスを受ける前の予備動作を指すケースが多い。
一般的なフェイクの一つが、アラ(サイドのポジション)でパスを受ける前に行うものだ。タッチライン際にポジションを取り、味方のフィクソからパスが出る前に一度前へダッシュ。裏を狙うフリをして手前に戻ってパスを受けるというプレーである。
だが、横江氏いわく、一般レベルや都県リーグなどでは、このフェイクを誤解した“なんちゃってフェイク”が頻繁に見られるという。
「最初から手前でパスをもらう前提のフェイクになってしまっている人がとても多い。相手の目の前で動いても引っ掛からないですよね。それどころか、戻りながらパスを受けることになるので身体の向きが悪くなり、相手DFがプレスを掛けやすい状況を自ら作ってしまう可能性すらある。それなら無駄に動かず、最初の位置で止まって待ってパスを受けたほうがよほど余裕を持ってボールを持つことができます」
では、本当の意味で効果的なフェイクをするコツはあるのだろうか。横江氏は「相手の視野から消えること」と解説した。
「ディフェンスのマークの基本原則は、『①ボール』と『②自分がマークする相手選手』を同一視野に入れること。首を振らずに両方が見える状況を作りたい。ならば攻撃側はそれを崩すために、自分をマークする相手DFの視野の外、すなわち“相手の背後”に走り込むのが効果的です」
相手の前でフェイクを入れても、守備側はボールと人を同一視野に入れたまま守れてしまうので怖くない。ならば相手の背後のスペースにまでフリーランニングで侵入してしまおうと言うのだ。守る側のアラの選手にしてみれば、自分の背後を取られ、そこにパスを出されてしまっては一気に大ピンチとなってしまう。そこで多くのDFは、裏を取られまいと後ろに下がる。この瞬間が本当のフェイクのタイミングだ。
「相手DFの真後ろに向かって回り込むように走り、第一優先としてまずは裏でパスを受けるプレーを狙う。そこでもし相手が下がってついてきたら、そのとき初めて走る角度を変えてバックステップで外に開きましょう。あくまでも最初は相手の裏を狙って、もしパスを受けられそうだったらそのまま裏で受ける。でも、相手DFが下がってついてきたのなら、裏を狙う動作を“キャンセル”して外に開いてパスをもらう。これが本当の意味でのフェイク、というよりキャンセルです」
実際、現役時代の横江氏もこの動きで味方のパスをよく引き出していた。特に左アラの位置で頻繁に発動し、左サイドの開いた位置でパスを受け、そこから自分の間合いで仕掛ける形を作っていた。「裏を取ってから手前に戻ってしまうのではなく、外に開いて受けるからこそより高い位置でパスを受けられる」との解説通り、相手のゴールに近い位置でパスを受けるからこそ、持ち前の“怖さ”もより発揮できていたのだろう。
バックステップでサイドに開いた瞬間を見逃さずに速いパスをつけられるフィクソの選手ももちろん素晴らしいが、裏を返せば横江氏がメッセージ付きのフリーランニングをすることでそのパスを“引き出していた”とも言えるはずだ。
ここまで読んでいただければ伝わったと思うが、このイベントに参加する価値の一つに、この圧倒的な“解像度”が挙げられる。Fリーグ中継でも同様だが、論理的に細かく噛み砕かれた解説は横江氏の真骨頂だ。フェイクに限らず、2時間のうちに行われたすべての解説で一貫して、一つひとつに明確な意図と理由がある。
「なぜその動きをするのか」
「なぜそのタイミングなのか」
「なぜそこを狙うのか」
なんとなく分かっているようで実は理解しきれていなかったことが、理由つきですべてクリアになっていく。一般的なクリニックに参加したとして、シュート前のフェイクを練習するプログラムはあったとしても、ここまでの解像度で理解できるプログラムはそうないのではないだろうか。
さらに言えば、既述の通り横江氏自身が現役時代にトップリーグで、あるいは国際試合でその技術を用いて実際に活躍していたからこそ説得力も抜群だ。
「めちゃくちゃ勉強になった」
「難しい内容のはずなのに、とてもすっきり理解できた」
「すっごい頭使ったけど楽しかった」
参加者のみなさんが口々にそう話してくださったのは、アシスタントを担当した身としても大変うれしいものだった。フットサルを趣味としてプレーする方から競技者まで、きっと多くの収穫があっただろう。そんな実感を得た2時間となった。
原理原則を知ることで、プレーの質が上がっていく
後半は体育館に移動し、横江氏による実技が行われた。アップ後、FPは講義でも解説のあったフェイクからスタート。横江氏の指導のもと、裏を狙ってからバックステップで外に開いてパスを受ける練習を行う。
ゴレイロは別メニューで、福田と共にゴレイロの基礎トレーニング。正面のキャッチングやローリングの基礎動作などを、1本1本ていねいに反復。私自身に大した指導力がないにも関わらず、ゴレイロの参加者のみなさん(4名)も熱く、そして集中してトレーニングに臨んでくださっていたことをここに記しておきたい。
その後FPとゴレイロが合流し、フェイクからのシュート練習を行った。時折、横江氏が参加者に個別でアドバイスする。
「もう少し身体を開いたほうがいいです」
「動き直すとき、角度をもう少しつけましょう」
「そう!今のいいです!その感じ!」
横江氏の声掛けで、練習にも熱がこもる。座学で内容をしっかり理解してからトレーニングに入れているからこそ、質もより高まっている印象だ。
最後の1時間強はひたすらゲーム。2面で開催したためほぼ休憩なし。「講義と練習で頭を使うから、ここで思い切り開放してもらいたい」と事前に打ち合せで話していたとおり、1時間に渡りみなさんが全力プレー。習ったばかりのフェイクに早速トライする人もいるなど、最後まで熱く、アグレッシブなプレーが目立った。
途中のわずかな休憩時間には、ゴレイロの方々&福田悠vs横江氏による第2PK対決も行われたが、この時間ですら理論を実践として見せる場だ。実は講義中「ゴールを決めるためのシュートの打ち分け方」のセクションもあったのだが、まさにその理論を実演するかのようなシュートが次々と決まっていく。私、福田もしっかり決められてしまった……。
横江氏のシュートは決して強く打っているわけではないのに、ことごとくネットを揺らした。それはGKの習性や、人間の身体動作を逆手に取った止めづらいシュートだからだ。フェイクに続きシュートに関する理論もすべて明かしてしまうのは参加者のみなさまに申し訳ないので詳細は伏せるが、ゴレイロ目線で見ても非常に“嫌なシュート”であった。
「ゴレイロのプレーを知ってこそシュートの打ち分け方を理解できるし、『なぜ決まったか』『なぜ止められてしまったか』が明確になりますよね。そうなれば闇雲にシュートを打つことはなくなるだろうし、仮に止められてしまったとしてもなぜ止められたかがすぐに理解できる。“立ち返る場所”ができることで失敗を次に生かしやすくなるし、それを繰り返していけば自ずとシュートのクオリティは上がっていくと思います」
ゴレイロを含め、あらゆるプレーの基本原理を知ることで、その弱点を突くことが可能になる。冒頭でも触れたように、今回のテーマは「点を取るためにDF側の原理原則を知る」。攻守は常に表裏一体なのだ。
最後は息の上がる方も出るほど、完全燃焼してクリニックを終えた。
「僕らだけでなく、みなさんでフットサル界を盛り上げていきましょう!」
横江氏の挨拶で、4時間におよんだ第1回リアルFリーグ大学は終了。退館後も横江氏に質問をする参加者の列ができるなど、最後まで熱い熱いイベントとなった。
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