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【コラム】戦力外通告、セグンド降格、そして退団──。挫折から多くを学んだ中島孝が“湘南のピケーノ”として輝きを取り戻すまで

PHOTO BY軍記ひろし

このままじゃ終われない

かくして、セグンドでの1シーズンを戦い抜いた中島は、シーズン終了後に翌シーズンのトップチームの編成が決まるのを待っていた。しかしそこでもクラブからは「監督の構想に入っていない」と伝えられた。

中島はこのとき初めて「選手を続けるか引退するかを真剣に悩んだ」。仕事のこと、家族のことなどを総合的に考えて、このタイミングが身を引くべき時なのではないか──。

しかし、そんな彼を支えたのが周りの友人や先輩、そして何より家族だったという。

「自分の中でも本当に悩みました。でも先輩たち、浦安のクラブスタッフも『最後までもがけ、カッコ悪くない。続けろよ』と言ってくれましたし、家族からも『ユニフォームを着た姿をまだ見たい』と言ってもらえました。そういう後押しは本当にありがたかったです」

そして中島を奮い立たせたもう1つの要因は「このままじゃ終われない」というプライドだった。

「シーズンが始まる前にあのような決断をされてしまいました。やりきって自分がダメで試合に使われなくなるのなら仕方ないです。それなら引退を決断していたかもしれません。ただ、何もしていない段階で、プレー機会がなくなりました。このままじゃ終われない。それが今の力になっています」

それから移籍先を探し始めた中島は、湘南に練習生として加入した。これだけのベテランが、フットサル人生をかけて練習生からの再スタートを決断したのだ。

与えられた一週間という時間の中で中島は「時間さえもらえれば違いを見せられる」と思っていた。実際にプレーに関しては、外から見て感じた「1対1が強いがバランスが悪い」という湘南の弱点を補うため、自分がプレーする際はバランスをとり「若い子たちや1対1が強い選手により仕事をしやすい状況を作る」ことを心がけた。それにより、中島は湘南との契約を掴み取ったのだ。

奥村敬人監督の言う「痒いところに手が届くプレー」は、まさに湘南が求めていたもの。事実、開幕3試合で未勝利だったチームは、中島のデビュー戦となった浦安戦、2戦目のヴォスクオーレ仙台で連勝を飾った。

とはいえ、中島自身はまだまだ自分に納得してはいない。ゴールという結果を残して、サポーターたちと喜びを分かち合いたいという。

「今までの湘南は僕自身、最もアウェイ感を感じられる場所で、対戦相手でしたがすごく好きなところでした。あのサポーターを黙らせてやろうってね(笑)。それが今度は後押ししてもらえる立場になりました。これほど心強いことはないですし、早くゴールを決めて、あのサポーターたちの下に飛び込みたいですね」

そんな中島は湘南に来て新たな自分を発見したようだ。浦安時代はベテランだったからこそ、他の選手からいじられることはなかった。しかし湘南に加入してからは「(山﨑)歩夢や(高橋)広大はいじってきますよ(笑)。あいつら、俺に平気で嘘つくんですよ」と、10歳以上も年の離れた選手たちからいじられる。

「でもそういうものが意外と心地よかったりします。今は毎日が楽しく色々な発見、新しい感情との出会いも含めて充実しています」

まさかの戦力外通告。セグンドでのプレー。そして15年を過ごした浦安を退団。苦しい時期を過ごした中島のフットサル人生がまた動き始めた。しかしまだ志半ば。シーズンを笑って終えられるように。“湘南のピケーノ”の活躍から目が離せない。

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