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作成日時:2018.08.31
更新日時:2018.09.01

スペインで戦う弟・和也へ、兄・清水誠也からの全力エール「楽しんでこいよ」

PHOTO BY軍記ひろし

フウガドールすみだの、日本フットサルの将来を託された清水和也はこの夏、スペインの強豪・エルポソへと移籍。下位に低迷する苦しい状況のなかで、クラブも彼のキャリアを優先してその挑戦を後押しした。和也が抜けてチームはさらなる苦戦が予想されるが、そんな今、大きな決意を胸にピッチに立つ選手がいる。

和也の兄・誠也だ。これまで、弟が常に自分よりも先を走ってきたが、兄として、どんな気持ちでプレーしてきたのだろうか。そして、弟の移籍に何を思ったのだろうか。

27日、アグレミーナ浜松に3-0で勝利したホームゲームを終えた直後、ミックスゾーンで彼の口から紡ぎ出された数々の言葉からにじみ出ていたのは、清水兄弟の絆の深さだった。選手として、家族として。誠也の中の2つの感情はいずれも、和也へのリスペクトと愛情であふれていた──。

和也の方がしっかり者でお兄ちゃんっぽい

──(アグレミーナ浜松を3-0で完封して)で4試合ぶりに勝利しました。ここから一気に浮上していきたいところですが、現状のチームのなかで、自分の役割をどのように考えていますか?
まずは和也が抜けて、これまで点を取っていた選手がいなくなるので、チームの得点力を上げないといけないということはピヴォ陣では思っています。そのなかで僕の役割は特に、年齢的にもまだ若い方なので、しっかりとチームの雰囲気をつくりながら前からプレスを掛けて、とにかく走って、1点を取りに行く。若手らしい泥臭い仕事もしっかりとこなしていかないといけないなと。それが自分の役割の一つかなと思っています。

──清水誠也選手は、ピッチ外の雰囲気づくりも大事にされているのではないですか?
そうですね。今シーズンは特に須賀(雄大)さんからも、ロッカールームでの円陣や、ベンチでの自分の役割をもらっている、というか自分からやっているというか。それはうまくハマっているのかなと。春木(啓佑)くんが来てくれたりとか、岸将太がいたりとか、バッファローズで培った盛り上がり方などは、逆に今のトップチームには少なかった部分かなと思って、それを出せているのはプラスかなと思います。

──元々トップチームが持っていたものが下部組織に伝染した一方で、逆にトップが少し静かになっていた。
そうですね。ベテランが増えて、年齢層が高くなって20代の選手が少なくなったこともあると思います。逆にバッファローズは10代から20代半ばの選手が多いので、その意味では雰囲気はバッファローズの方が、今までのフウガ・イズムを受け継いでいるのかなと、そこを強みとして捉えています。

──今シーズンのチームはかなり苦しんでいます。雰囲気はどうなんでしょうか。
正直なところ、自分たちがやってきたことが出せていないわけではないので、悪くはないと思っています。湘南ベルマーレ戦とかも負けているのですが、最後の最後で負けるというか。敗因がはっきりしないような負け方だったりするのですが、それでもチームの雰囲気は保てているように感じます。

それで結果がついてこないので、各選手が思うこともあると思うのですが、みんなベテランなので口には出しません。でもなんとなく、何かを思っているのかなとは感じていて。まずは1戦1戦、勝ち切るために、前半戦は特に良くなかったので、ここから2巡目に入るので、まずは全員で次のシュライカー大阪戦に向けて準備していこうというマインドではあるので、ここから波に乗れたらとは思っています。

──フウガドールすみだは、誰がではなく全員が主役のチーム。ただし、清水和也という選手の存在が年々、大きくなってきたところで移籍しました。今ここで、チームは頑張らないといけないタイミングかなと。
本当に顔役で、フウガドールすみだといえば和也というところもありました。そこに頼ってはいけないのですが、頼らざるを得ないというか、結局、試合を決めてきたのはあいつでした。逆に今年は、それこそシーズン当初からみんなが主役だと話していたので、それを思い出してやるべきかなと思っています。

──言い方はよくないですが、和也さんはチヤホヤされていますけど(笑)、個人的にはどんな感覚でしょうか?
僕の中では2つの目線があります。選手としての目線と家族としての目線。選手としては僕もああならないとなって。僕が頑張れるのは、和也がどんどんレベルアップして差を見せつけられてきたことで、俺ももっとやらなきゃなっていう気持ち、選手として一つの目印になっています。

でもお兄ちゃんとしては逆に心配で(笑)。ああいう感じじゃないですか? 人前ではクールというか、試合中もブスッとした感じなんですけど、もう少し、若いんだからもっと笑えよって(笑)。誤解されるようなやつなので、そこは少し心配もしていて。

チヤホヤされるのは、注目されているということなので僕はいい方に捉えていて、逆に、和也だけじゃないんだぞというのを見せられていないのは、僕らがもっと輝いていかないといけないなと思っています。

──和也選手は10代の頃からすごく受け答えもしっかりしていて「なんてしっかりした子なんだ」と驚いていましたが、それが素の姿でもあるんですよね?
そう、それは素です。あいつ自身がちゃんと持っているものなんです。実は僕がしっかりとしていないというか、抜けているところがあるんです。和也の方がお兄ちゃんっぽくて、僕が弟っぽいところがあって、そういう育った環境もあって、彼がしっかりしてきたのかなと。最近は、僕も(和也の)お兄ちゃんって呼ばれていますけど、実はそうでもないよって(苦笑)。チームメートはそういうところもわかっているんですけどね。

──意外と和也選手が兄のようなんですね。
そうなんです。しっかり者というか、ちゃんとしています。僕は忘れ物をしたり、時間もギリギリになったりとか、なかなか……。

──スペインに行くことは相談されたりしましたか?
それはなくて、僕ら兄弟は、自分のことは自分で決めるというのが結構あって、僕もフウガに入ることとかも基本的には自分で決めました。俺はこれをやるっていうのを、決まったことを伝えるという感じです。和也もスペインに行くって言っていたので、じゃあどこかのクラブに行くんだなって思っていました。逆に、チームが決まるかは心配でした。受け入れ先があるのかなと。行くだけ行って、チームがないとかではもったいないので。

──エルポソへの加入を知ってどう思いました?
純粋にすげー! って思いました。映像とかでも見ていますし、フットサルをしている人であれば、スペインのチームといえば絶対に名前が出てくるチームですからね。そこに行くのは本当に選手としてすごいなって思いました。悔しいという気持ちももちろんあったんですけど、それよりもお前すげーなって。

──選手としてすごいなという思いと、家族として応援する気持ち。
そうです。頑張ってほしいなと。それで、和也のその移籍をいかに自分のモチベーションに変えるのかというのは、自分の中でやっている作業ですね。心の整理をしています。

──兄弟で選手だと、比較されることもあると思います。その難しさは少なからずあると思うのですが、それを清水兄弟が出すことはないですよね。いい意味で刺激し合っているのかなと。
基本的にこれまでずっと学年がかぶってきました。和也が1年生の時に僕が3年生で。フウガに入って最初の頃は比較もされていました。それでどんどんあいつがステップアップして注目もされるようになって、それでお兄ちゃんがいるらしいよとなって、でも僕はサテライトにいる。そういう厳しい現実はありました。最初の頃は少しキツかったのですが、それを僕が出しちゃうのは悔しいなって。そこは開き直って、一生懸命にあいつを応援するし、自分らしさを失わないようにやっていこうと心に決めたんです。

それに、そういうことを和也にも相談したくなかった。弱音を吐きたくなかった。自分が決めてやることだから、とにかく和也と張り合えるような存在になろうと常日頃から思っていました。

──和也選手が弱音を吐くことはあるんですか?
弱音というか、あいつが思っていることがあって、それを吐き出せないときには聞いていました。不満ではないですけど、俺はこうしたいのにうまくできないみたいなことは、同じポジションですから、俺もその気持ちはわかるよって。お互いに、ちょっとストレスが溜まったときのはけ口になっていますね。やりたいことがうまくいかないときに、こうした方がいいんじゃない? って、プレーの話が多いですよね。あのときにお前はこうしたけど、こっちの方がいいんじゃない? とか。その選択肢もあったねっていうようなディスカッションはしていましたね。だから2人の間で弱音は吐かないですね。

──ちなみに、家族での壮行会みたいなことはしたんですか?
なかなか2人の予定が合わなくて。もう1カ月くらい前ですかね。おばあちゃんが、和也の最後のホームゲームのときに見にきてくれたので、そのときに初めて家族全員がそろいました。ご飯とかは、2人ではよく食べに行ったりしますけどね。でも本当に家族は仲がいいと思います。僕らが家族の中で話題になっていて、試合を見にきてくれたりもしますし。そのためにも頑張ろうと、2人ではよく話していました。

──では改めて、和也選手へのエールと、彼が不在のチームを守っていく、帰ってこれる場所をつくっておくというような誠也選手自身の決意をお聞かせいただけますか?
まず和也に対しては、一つは滅多に味わえない環境なので、しっかりと悔いが残らないように、思う存分に自分らしさを出してプレーしてほしいなと。絶対に壁にぶつかることがあると思うのですが、そういうのを全部ひっくるめて楽しんでほしいなと思っています。

それで僕自身が一番思っているのは「和也がいなくなってフウガはダメだね」って言われたくないので、まずはしっかりと自分が試合に出て結果を出すことを目標にしています。なおかつチームの順位を上げたい。プレーオフに出れるようにしたいので、まずは自分が結果を出せば、チームの結果が出るような選手になりたいなと。

──和也選手がいない今だからこそ「清水誠也」を上げていくチャンス。
そうです。言い方は難しいですけど、和也がいなくなったことで「席が一つ空いた」ので、それに対して僕が、岡村康平、大薗諒といういいピヴォがいる中で、僕がどれだけ須賀(雄大)さんにアピールできるか。どの選手もみんなタイプが違うので、しっかりと自分の良さを出しながら、なおかつ張り合えるような選手にまずなりたいなと思っています。

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