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作成日時:2024.03.06
更新日時:2024.03.07

【第29回全日本選手権|ミックス/名古屋vs立川】“絶対王者”の一員として、初めて苦難の1年を過ごした名古屋・吉川智貴「一人の人間としての学びがすごく多かった」

PHOTO BY高橋学

3月3日、駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場にて第29回全日本フットサル選手権大会の決勝戦が行われ、名古屋オーシャンズ立川アスレティックFCが対戦。名古屋が6-2で勝利し、5年ぶり6度目の日本一の座に輝いた。

苦しかったって言葉しか出てこない」

奇跡のFリーグ逆転優勝を果たした際、絞り出すようにそんな言葉を口にした吉川智貴。この日、シーズン三つ目のタイトルを手にしミックスゾーンで同じ言葉を口にしたベテランの声色は、2カ月前よりも晴れやかだった。

名古屋が一度リーグ優勝を逃した2016年にスペインにレンタル移籍していた吉川は、名古屋のエンブレムをつけて初めての苦難を乗り越え、今何を思うのか。

試合を終え、吉川に話を聞いた。

取材=辻歩(ABEMAアナウンサー)



借りを返せるチャンスだった

──優勝おめでとうございます。2年前の決勝と同じ顔合わせになりましたが、対戦カードが決まった瞬間に何か感じるものはありましたか?

町田にもリーグ戦でやられていますし、どちらのチームが来ても「借りを返せるチャンスだな」とは思っていました。結果としてアスレが勝ち上がってきて、2年前のリベンジできるなと決勝で負けることが一番悔しいので、今回はもう負けないなというところで、気持ちも引き締まりましたね。

──準備時間はほとんどありませんでしたが、アスレを相手にどういうところに注意して試合に入りましたか?

自分たちがやるべきことを一番大事にしているチームなので、特に相手がどうというのはあまりないです。ただ、その上で相手の持ち味としていいディフェンスからのカウンターというところがありました。前からプレッシャーをかけてきますし、逆にハーフに聞いた時も4人が全員でコンパクトを守ってきて、こちらとしてはシュートを打ちづらい守備をしてくるので、そこをどう攻略するかが鍵になるだろうというのは考えていましたね。

──今日も立川のプレスがかかりきったところで、名古屋が回避してそのままゴールに向かうシーンが何度もありました。

ハーフに引かれて4人でボールサイドに強く来られるとすごく難しいですし崩し切るのは簡単じゃないので、相手を引き寄せてうまく裏を取っていければなということは常に考えていました。

この1年の経験は、フットサルを辞めた後の人生にも生かせるもの

──結果的には全てのタイトルを取るという形で終わったものの、難しいシーズンだったと思います。改めてシーズンを振り返って。

苦しかったという言葉しか出てこなかったですね。シーズン中もそうですし、今振り返っても、やっぱり「苦しい」の一言に尽きるかなって。自分としてはもうこんなシーズン過ごしたくないですけど、そのぶん喜びもすごく大きかったし、充実したいい学びを与えてもらったあのシーズンだったかなと思います。選手として何かを学んだっていうことよりも、一人の人間としての学びがすごく多かったです。この1年での経験は、フットサルを辞めた後の人生にも生かせるものじゃないのかなと思います。

──具体的に人間的に成長できたという部分はどういったところですか?

いろいろありますけど……。何事も最後まで諦めちゃだめっていう。こんなの言葉にしちゃえば軽いものだし、口にするのもあんまり好きじゃないですけど(笑)。うまくいかないなかでどうやってチームをいい方向にもっていけるかとか、チームとしてどうまとまるべきかとか、コミュニケーションの仕方も含めて大きな学びになりました。

──チームがバラバラになりそうな時もあった?

いや。逆に「まとまってるからこそ良し」とされてたところもあったというか。この場でうまく言葉にできないんですけど、簡単に言っちゃえば「仲いいだけ」になっているというか、厳しさが足りないんじゃないかというところですかね。

──フエンテス監督が今季で退任ですが、この5シーズンは吉川選手のフットサル人生にとっては、どんな時間になりましたか。

自分はスペインに行ってたのもあるので戦術的に新しいものとかはなかったですけど、セットプレーの細さとか、タイミングは、すごく教えるのがうまかったです。あとは勝ちに行く姿勢っていう部分は、毎試合伝えてくれていたところでした。スペイン人っぽくないというか、すごく寡黙で常に冷静なので、そこは見習えるところだと思います。

──今日はたくさんの観客が入った、素晴らしい雰囲気のなかで優勝を決めました。コロナ禍での無観客試合も含め、ここ数年フットサルをめぐる環境が大きく変化していますが、ベテランの吉川選手から見て、日本のフットサル界の現状や課題をどう感じていますか?

競技レベルでいうと、本当に成長段階を登ってるかなと思います。代表チームを見ていても、今までと違うプロセスややり方にうまく適応できているし、アルゼンチン代表とも引き分けたり、ポルトガル代表との試合にも結果的には負けてしまいましたけど、自分たちがやりたいことができる時間がすごく増えたので、フットサルのレベルは着実に上がってきていると思います。

競技面以外のところは、いろんな目線があるので難しいところです。でも選手としては、年間全ての試合で、今日のようにたくさんの観客の皆さんに来ていただいて、ワンプレーで「わっ」と歓声があがる空間で戦うことができたら幸せなことですし、そうなってほしいなと常に思ってます。でも、これは選手が頑張ってることだけで解決できることでもないですし、クラブスタッフやリーグも含めて全員で良くしていかなきゃいけない問題ですね。

 



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