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作成日時:2018.08.20
更新日時:2018.08.20

Fリーグに“再デビュー”を果たした春木啓佑は、低迷するフウガドールすみだの救世主となれるのか?

PHOTO BY軍記ひろし

フウガドールすみだが苦しんでいる。リーグ戦9試合を終え、2勝7敗の11位。さらに、エース・清水和也がスペイン1部の強豪エルポソ・ムルシアFSへ移籍、開幕前から絶好調だった田口元気が負傷により早々に長期離脱を強いられるなど不運も重なっている。そんな流れを変える救世主として期待される男がいる。Fリーグに“再デビュー”を果たした春木啓佑だ。

墨田2連戦で示した確かな存在感

7月18日に今季初めてトップチームに登録された春木は、その週末にホーム・墨田区総合体育館で行われた第6節のFリーグ選抜戦で早速メンバー入りを果たすと、岡村康平、宮崎曉、諸江剣語という経験豊富な3人とともにファーストセットに名を連ねた。

背番号3は序盤からアグレッシブなプレーでチームに勢いをもたらし、攻守にFリーグ選抜を圧倒していく。そして前半1分53秒、諸江との完璧なワンツーで右サイドを縦に抜けると、持ち前のスピードで相手を振り切り右足一閃。左サイドネットへ鮮やかな先制弾を突き刺してみせた。

「良いタイミングで裏に抜け出すことができました。(ピヴォの)岡村が逆サイドに張ってフィクソを引っ張ってくれたお陰でカバーも来ていませんでしたし、相手のゴレイロもゴールに張り付いていたので“打とう”と。思い切り良くゴールに向かっていくのは自分の特徴でもありますし、何より序盤だったので、チームに良い流れを呼び込めればと思って。個人としても結果を出せたのは良かったと思います」

その後も春木はピッチを縦横無尽に走り続け、4-1での勝利に大きく貢献した。フィクソとして春木と随所に好連携を見せた諸江も「春木のスピードが活きた場面がたくさんありました。攻撃の場面だけでなく、カウンターを受けた時の戻りも早くて、それによって相手の攻めを遅らせたシーンも何度もあったので」と賛辞を送った。

翌日の第7節・名古屋オーシャンズ戦でも、春木はアグレッシブなプレーでチームを引っ張った。2試合連続でスタメン出場を果たすと、持ち前のスピードで相手を翻弄。前からボールを奪いに来る名古屋の守備網を何度もかいくぐり、あわやという場面を作ってみせた。後半の頭から名古屋がディフェンスのスタートラインをハーフまで下げたことからも、裏に出る春木のスピードが脅威となっていたのは明白だ。

後半14分に自陣ゴール前でのディフェンスが決定機の阻止と判定されやや不運な退場処分にこそなってしまったものの、そのプレーは低迷するチームに新たな風を吹き込むのに十分なものだった。覇気に満ちており、高いモチベーションはすみだのチームメイトにも伝播していた。

何がそこまで春木を突き動かすのか──。大きな転機となったのは、今季開幕前のバッファローズ(サテライト)への降格だった。

血となり肉となったバッファローズでの3カ月

春木は現在27歳。大学在学中に東海リーグのCAT’s/AGM(現在のDele Yaone岐阜/AGM)で本格的に競技フットサルを始め、卒業と同時に「フウガでプレーしたい」という一心で上京。バッファローズで2年間プレーしたのち、昨シーズントップチームに昇格。リーグ戦7試合に出場した。目標としていたFリーグデビューを果たし、飛躍の2年目にするべく意気込んでいたところで、春木に無情の通達がなされた。

「4月に“今季のスタートはバッファローズで”と告げられました。言われたときはもちろん悔しかったし……正直受け入れるのは難しかったです」

ただ単に「Fリーガーになりたい」ではなく、「フウガの選手としてFのピッチに立ちたい」という気持ちでチームの門を叩いた春木。夢だった舞台に一度は立てたからこそ、離れてみてさらにその思いは強くなった。

「落ち込みながらもいろいろ考えて頭の中を整理したときに、やっぱり“またトップのメンバーと一緒にあのピッチに立ちたい”という気持ちが強くなっていって。この悔しい気持ちを成長の糧にしないといけないと思いました。絶対いつかチャンスが来ると信じて、バッファローズでの日々の活動に全力で取り組みました」

もう一度、トップでプレーしたい──。その一心でやり抜いた春木は、わずか3カ月でのトップ再昇格をもぎ取った。一度は突き放されたからこそ、「今度こそは」という気持ちが、現在の春木の高いモチベーションに繋がっているのだ。

また、バッファローズに戻ったことで思わぬ副産物も生まれた。トップチームでは若手の春木も、バッファローズではトップ昇格経験を持つベテランであり、当然チーム内で求められる役回りも変わってくる。本来は典型的な「使われる側」のプレースタイルである春木も、バッファローズでは試合の流れ次第で全体のバランスを取ったり、ゲームのペースを落ち着けたりといった役割を担うことも多くなった。

「年齢的にも、ただ単に自分の良さを出すだけではなくて、もっと試合の流れを読める選手にならないといけない。そう考えたときに、バッファローズで主導権を握って4人を動かす、試合を動かすという立場を経験できたのは大きかったと思います。使われる側にはない、また違った緊張感があるので。この2試合Fのピッチに立ってみて、改めて自分に足りない部分がたくさん見つかりましたが、それもバッファローズでああいう経験ができたからこそ、より明確に整理できているように思います。足りない部分を改善して、プレーの引き出しを増やして、今よりもっともっとチームに貢献できる選手になりたいです」

熱いハートを持ったスピードスターは、心の内に溜め込んだ思いを胸に、苦境に立たされているチームに躍動感をもたらすことができるか。

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