更新日時:2023.12.12
【日本代表】名古屋と3日間の代表合宿で広がった、甲斐稜人の『景色』と『思考』。「見えている世界観が、狭いものだったと思い知らされた」
PHOTO BY本田好伸
12月12日、フットサル日本代表は12月14日と17日に開催されるアルゼンチン代表との国際親善試合に向け、高円宮記念JFA夢フィールドにてトレーニングを行った。
9月に行われた国内合宿で1年8カ月ぶりに代表活動に参加し、今回木暮ジャパン始動後、初めての国際親善試合のメンバーに選出された甲斐稜人。昨年12月にペスカドーラ町田から名古屋オーシャンズへの移籍を決断し早くも1年が過ぎ、出場機会に恵まれない期間を乗り越え、そのプレーはたくましさを増している。
トレーニング後、甲斐に話を聞いた。
考えながらプレーすることを意識
──今回のアルゼンチン代表戦に向けたメンバーに選ばれてどんな気持ちですか?
まずは選ばれてうれしいです。この前の(9月末に)若手の合宿で3日間やらせてもらって、そこで代表のやり方、戦術などをいろいろと取り込んでいく流れでした。ただその3日間は僕自身、簡単に言うと、うまくいかなかった。
新しい情報ややり方を自分の中に入れていく過程で、処理しきれなかった。自分のプレーをできないまま3日間が終わってしまいました。今回の合宿に呼ばれて、オーシャンズで呼ばれている選手も多いので、金澤空にやり方を事前に聞いて予習をして(笑)臨んだ感じです。
──若手主体の合宿を終えて、その後の2カ月の期間で、甲斐選手のプレーがかなり進化した印象でした。パフォーマンスがすごく高かった。そこはなにかきっかけがあったのでしょうか?
コンディション自体は今年の4月の始動から、自分が取り組んでいるトレーニングなどがようやく形になってきたかなと。プレー面については、あの3日間で自分の現状の“見えている世界観”とか感覚が、めちゃくちゃ狭いものだったと思い知らされました。それは僕にとっていいきっかけだったと思います。
まだまだ僕が見えている世界は狭いですし、もっとできることを増やさないといけない。そこは少しずつ、あの合宿が終わってから練習の中で意識して、自分のストロングポイントだけではなく、できていないことにもより取り組んでいくきっかけになりました。正直、それを試合で出せているかというとまだ全然、出せていないと思います。
ただ練習で少しずつ、見えている景色が変わるタイミングは増えてきた感じです。
──景色が変わる。ピッチの外から見ている人にとってはとうてい見えない世界だと思うのですが、その“景色”ってなんですか?
僕は、どちらかというと考えてやるタイプではなく感覚でプレーするタイプです。僕もどの景色がって言うと難しいですけど、意図をもったプレーというか。そこにパスを出した意味はなんなのかとか、そこにサポートに行った意味はなんなのかとか。そういった、考えながらプレーする、僕の苦手な部分をやっていかないとな、と(苦笑)。
──意図がつながると、4人で景色を見られる感覚でしょうか。名古屋でも、イメージを共有していると感じるプレーはすごく多いですが、ズレるとノイズのようにもなってしまう。そんな感覚ですか?
意図を合わせるにはいろんな方法はあると思います。コミュニケーションを取ったり、一緒に出ているセットで他の3人のストロングポイントでも変わってきます。代表でのやり方、名古屋でのやり方もあるなかで、一番は自分の良さを出していかないといけない。そこは意識しないと、形だけをやっても、僕がいるメリットはあまりないので。
どうやって自分のストロングポイントを出すか。そのためにはまず、代表のベースの動きの質を上げていかないといけないですし、迷うなくできるようになって、そこから良さを出していかないと難しいと思うので。そのベースを取り込んでいる作業の最中です。(コーチの高橋)健介さんに手伝ってもらったり、映像を見たりして、もっともっとやり方のベースを上げていかないといけないです。
はじめて紙に、「どうなっていたいか」を書き出した
──ベースがあるなかで自分の良さを出すイメージができるようになってきた。
正直、まだ出せてはないですね。
──名古屋ではかなり出せている感じがします。
そうですね。名古屋では出せるようになってきましたね。自分に求められているものもなんとなくわかってきましたし。ここ最近は特に。名古屋は自分のストロングポイントを出してほしい、と。あまりベースとかはなく、最後は選手同士の関係でやるイメージです。なので、代表のなかで自分を出すのはまだまだできていないかなと思います。
──そうやって試行錯誤してきたなかでこのタイミングで呼ばれ、トレーニングをした感触は?
あの3日間のスタートよりは少し予習してきましたし、迷いなくはできていますが、それでも、敵アリになると状況も変わってくるので。選択肢も増えるなかで、もう少しやりながらどの選択がベストかを感覚的にもつかみながらやっていけたらと思います。
──ただ、長期離脱でピッチに立てない時期を経て、名古屋でも出場機会を増やし、パフォーマンスを上げ、今こうしてプレーする姿を見ていると、表情がよくなったな、というか。
あ、ほんとですか(笑)。リーグが始まった4、5、6月は正直、僕のなかでも、シーズンが始まって「これはすぐには出られないな」と。そこで考え方を切り替えて、とりあえず自分ができるトレーニングを重ねる。失敗も多いですけど、そこからどうやって学んで次は失敗しないとか、できている選手はなぜそれができているかとか、オーシャンズにはそれを見られる環境も、トレーニングできる環境もあるので、いい環境を最大限に使わせてもらっているので。
──金澤空選手も、同じように出場機会や結果を出せない時期もありました。どこか似ていますよね。
そうですね。僕は4月から始まって3、4カ月後に自分がどういう立ち位置、状態かを想像して、どうなっていたい、出場時間はどうだとか、自分でも初めてですが紙に書き出しました。そのためには、この4カ月の間、なにをするか。もっと細かく、この1カ月、1週間、どんな取り組みをしたらいいか。
試合に出られないことによって、考える機会にはなりましたね。
──金澤選手は、代表では先に行っていますよね。2人は同級生ですよね。どんな関係ですか?
はい、中学校、高校と同じクラブでやってきました。関係……。
──ライバルという感じ?
いや、ライバルとは思っていないですね。いい仲間として。仲は良いですよ。僕が空の家に行って遊んだりしています。お互いに切磋琢磨する関係です。僕のなかでは、誰と比べるとかはなくて、自分がどうなりたい、どうありたいのために、よく言いますけど、うまくいかない時でも自分に矢印を向けて取り組んできただけなので。誰がどうとか、どれくらい出ているとか、誰が代表に選ばれているとかは気にしないで、自分がこの先、4カ月後とか、半年後とか、どうなっていたいか。そこで代表に呼ばれているためにということを常に考えてきたので、ライバルとか、そんな思っていないです。逆に、代表の戦術を教えてもらって助けてもらっているので。自分のためにやっている感じです。
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