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作成日時:2024.05.07
更新日時:2024.05.09

【緊急インタビュー】衝撃のW杯予選敗退…仲間に託すことしかできなかった日本代表エース・清水和也の後悔「いまは時間をかけて、この事実を呑み込んでいく」

PHOTO BY伊藤千梅、本田好伸

ワールドカップへの出場権を逃し、日本フットサル界にとって二度目の悪夢が起きてしまった。

無念さや喪失感が残るが、誰よりももどかしく、後悔の念にかられているのは、清水和也だろう。

エースとしての活躍を期待されながら、AFCフットサルアジアカップ2024の開幕を目前に怪我で帰国することになり、画面越しから仲間が戦う姿を見守った。アジアの連覇とW杯出場をつかみとると信じて。

このまさかの結果を、清水はどう感じ、どう受け止めているのか。

「まだ気持ちがまとまってないですが、それでも大丈夫であればいけます!」と名古屋オーシャンズ経由で了承をもらい、アジアカップ決勝戦の日でもあった4月28日にインタビューを実施。怪我がなければその日、バンコクアリーナのピッチに立っていただろう清水に、オーシャンズフィールドで率直な思いを聞いた。

取材・文=舞野隼大

↓日本代表の全てがここにある↓

見えないプレッシャーを残してしまった

──まだ気持ちの整理がついていないなか、リハビリ後に取材を受けていただきありがとうございます。怪我の状態は良くなってきましたか?

そうですね。肉離れなんですけど、いまは軽いランニングぐらいはできるようになりました。

──振り返りたくないかと思いますが、どんな状況で怪我を負ってしまったのでしょうか?

オーストラリア代表とのトレーニングマッチで、3点差をつけられたけどチャンスにつなげられそうという状況で、ボールを取りにいこうとした時でした。ピッチとかみ合わせが悪くて、そのまま足が抜けずに(筋肉が)伸びてしまいました。筋肉がぶちぶちぶちって剥がされるような感覚があって、その瞬間から立てず……「終わったな」という感覚が正直ありました。周りのみんなには悟られないように「大丈夫、大丈夫」って装いながら応急処置をしてもらって。その日の夜に病院でMRIを撮ったところ、素人目でもわかるくらいの出血が何箇所も見られて「これは厳しいな」と。ドクターからも、大会期間中の復帰は難しいと告げられて、離脱が決まりました。

──怪我の状況は、チームにどのようにして伝えましたか?

最初に伝えたのは監督でした。ドクターと話を終えた時には日付が変わって1時を過ぎていましたけど、結果が出るのをずっと待ってくれていました。良くない結果を伝えた時の監督の表情がいまも忘れられないですし、離脱させなければいけない判断をさせてしまったことに関して、すごく申し訳ない気持ちと悔しい気持ちがあります……。

──選手たちには、どんな言葉をかけましたか?

翌日の朝食会場でみんなの前で、W杯出場が懸かったアジアカップ直前に離脱してしまう申し訳なさと、「日本に帰っても、みんなのことを信じ続ける」という言葉を残させてもらいました。でもいま思うと、なんていうのかな……そういった面でも、見えないプレッシャーを残しちゃったのかなって……。なにか、みんなの気持ちを少しでも楽にさせるような声かけがあったんじゃないかって思います。僕だけでなく、(怪我のため直前にサポートメンバーに回ったフィウーザ)ファビオだったり、離脱した(オリベイラ)アルトゥール、3年間一緒に代表のエンブレムを守ってきた選手の分まで頑張ろうといったなかで、いろんな重圧と戦いながらプレーしていました。タラレバでしかないですけど、チームに残る選択を無理にでも取るべきだったのかなという後悔が強く残っています……。

充実した過程も、結果が出せずよくわかっていない自分がいた

──残った選手たちは清水選手のゴールパフォーマンスをして、離れていても一緒に戦っているように見えました。

自分自身、代表歴も長くなってきたことで若い世代の選手たちとキャプテンの間に入ってコミュニケーションをとることを意識していました。今度はみんなが僕のためにやってやるという姿勢を示してくれたように感じましたし、「離れていても自分たちはファミリーなんだな」と、うれしかった気持ちと同じくらい「なんで自分はそこにいられないんだ」という悔しさもありました。つっつー(堤優太)や(石田)健太郎とはよくビデオ通話をして、代表の練習やピッチ外での様子を2人はこと細かく話してくれました。トレーナーやスタッフの方々ともコミュニケーションが取れて、必ずやってくれると思いました。

──1勝1分1敗となってしまったアジアカップの3試合は、清水選手の目にどう映りましたか?

自分自身はW杯予選を経験したことがないので想像の範囲内でしか言えないですけど、いつもと違うプレッシャーはあったと思います。見えない硬さが出てしまうとは思っていましたけど、第2戦の韓国戦でみんながイキイキとプレーをしている姿や球際への執念を感じましたし、本来の姿を取り戻しつつあるなと見ていました。ただ、第3戦のタジキスタンとの試合は、勝たなければ決勝トーナメントへ進めない状況で同点にされてしまい、大きな動揺があったのかなと感じました。

──タジキスタン戦の残り数秒はビデオサポートも使いながら時間を1秒でも長くして、少しでも勝ち越す確率を上げようとしていました。

事故的でもなんでもいいから、ゴールにボールが入ってくれと思って見ていました。でも、それまでの時間も何度も相手ゴールを脅かすシーンはありました。みんなもがき苦しみながら点をとりにいっていたのかなと思いますし、調子がいいのに点がとれないという経験もしてきたので、その難しさも理解できます。複雑な気持ちで見ていました。

──それでも得点は生まれず、グループステージでの敗退とW杯の出場権を逃してしまうことが決まりました。

試合は「DAZN」で見ていたんですけど、良くも悪くも、タイムアップからすぐに配信は終了したじゃないですか。シーンとなったまま目の前の現実を受け止められない自分がいましたし、隣で見ていた奥さんもすごくショックを受けた顔をしていて、すぐに会話ができず空白の時間がずっと流れていました。それから少し経って、悔しい気持ちが湧いてきましたけど、それ以上に自分自身に対するいら立ちや、なんで怪我をしてしまったのか、なんで離脱してしまったんだっていう不甲斐なさが強かった……。

ピッチに立っていたみんなの精神状態もすごく心配でした。いろいろなプレッシャーと戦いながら、くじけそうになってもピッチ上で頑張るみんなを見て、なんていうのか……「過度なプレッシャーをかけすぎてしまったのかな」とも思いましたし、自分自身も同じ苦痛をみんなとその場で共有できていれば、なにか変わったのかなという後悔しか出てきませんでした。日本フットサル界にとっては2度目の悪夢になってしまい、期待してくださった方々や自分たちの活動を支えてくれた方々、現地に足を運んでくれた方々に対して申し訳ない気持ちしか出てきません。

──配信はすぐに終わってしまいましたけど、現地から発信された会場の様子を見て、言葉が出てきませんでした……。

ピッチで涙を流していたり、うなだれる選手たちもいましたけど、自分も同じ気持ちでした。応援してくれている人、自分の活動を支えてきてくれた人たちに、ただただ申し訳ないという気持ちで、その時は謝ることしかできないという思いでした。この結果は当然受け入れなければいけないし、フットサル人生を懸けてでも取り返しにいかないというのはありながらも、すぐに立ち直れることではありません……。前回のW杯からここまでで、いいこともあれば辛いこともあって、そのなかでたくさんの人の支えがあって、ここまでの過程を振り返って自分としては、これでもかというぐらい悩んだこともありました。それを含めて、すごく充実した過程を過ごさせてもらったなかで結果が出せなかったことに対して、よくわかっていない自分がいました。もしかしたら、いい準備をしてきたと思っている“だけ”かもしれないですけど、いままでやってきたことに対して後悔はありませんし、次へつなげるためにもよりハードに取り組まきゃいけないといけないと思っています。

この“傷”はこの“傷”のまま背負わないといけない

──敗退が決まって、チームメイトにはなにか言葉をかけることはできましたか?

つっつーと健太郎といつも話しているグループがあるので、試合が終わってすぐにそこへ自分の率直な気持ちを送りました。彼らからは「ごめんなさい」、「申し訳ない」という言葉が返ってきて、名古屋に戻ってきた代表組の第一声も「申し訳ない」という言葉で……。その思いというのは自分がもっていたもので、みんなからその声をかけられて自分の無力さを痛感しました。みんなの必死な思いは画面越しでも伝わってきたからこそ、落ち込んで謝罪する姿を見て複雑な気持ちにもなりましたし、その場ではそれ以上の言葉をかけることができませんでした。でも、離脱してしまった僕らの分まで戦ってくれて感謝しかありません。

──顔を上げて前へ進む以外に選択肢はないと思うのですが、そう簡単に気持ちを切り替えられるものでもないですよね……。

そうですね。気持ち的にはすぐに切り替えられるわけでもなく、いまは時間をかけてこの事実を呑み込むことを最優先にしています。時間が経てばこの“傷”は薄れていくと思いますけど、この“傷”はこの“傷”のまま背負わないと、もしかしたらまた同じことが起きてしまうかもしれない。もう同じ経験をしたくないし、年齢的にも自分がピッチに立って(W杯への切符を)勝ち取らなきゃいけないと思っています。

──一方で、ピレス・イゴール選手のように「代表の選手としては今日が最後の試合だったと思う」と話している選手もいます。

自分は2016年の日本がW杯出場を逃してしまった時の、隣で見ていた稲葉洸太郎さんの顔をいまでもはっきりと覚えています。洸太郎さんは年齢的にあの大会を最大で最後の目標としてやってきたなかで、4年のサイクルがそこで終わってしまい、それが潰えてしまいました。2021年のW杯でも、これが最後になるという選手たちの姿を見てきて、今回イゴールがそうした発言をしていたのを記事を通じて目にしました。イゴールはオーストラリア戦で自分が怪我をした時に自分が肉離れをした時のことや病気でプレーできなかった時の経験を踏まえて、ポジティブな言葉をいち早くかけてくれました。自分はそういった人たちの思いも背負いたいですし、彼らから学んだことを新しく代表に入ってきた選手たちに伝えていく必要があります。

──同じことを繰り返さないために、清水選手がいまの時点で考えていることはなにかありますか?

いろんな角度からこの敗戦を捉えて、次に向けてどう動くかが大事だと思います。メディアの方々もこの敗戦をどう伝えて、どう問題提起をしてこの先につなげるかが重要で、日本フットサル界がまた前を向けるようなアクションを起こさないといけません。大好きなフットサルをしている以上、このスポーツをもっともっと有名にしていきたいですし、自分より下の子たちが夢を見れるような業界になってほしいと思っているので、いろんな側面から変われるきっかけにしなければいけないし、変われるきっかけになると思っています。そのために、「こうすればうまくいく」という単純な方法があるわけではないですけど、一つ確実に言えることは、自分自身で次の大会へ向けてリベンジするということ。すべてを懸けてまたやっていきたいです。

──タジキスタン戦から2日後に『前を向くためにも、この責任を常に背負い行動していきます』とSNSを更新されていました。そうした気持ちから思いを綴ったのでしょうか?

みんなに本当に申し訳ない気持ちが強かったですけど、発信した意図は、自分自身のためでもありました。いろんな人の気持ちを考えた時に、迂闊に言葉をかけられないなと思い、誰宛とかでもなく、あの投稿はただ単に自分へ向けて、ピッチに立てなかったもどかしさ、出場権を逃してしまった喪失感といった様々な感情を忘れないためにも自分がここで発信するべきだと思ってしました。もう一つは、もしかしたらマイナスに捉える方もいたかもしれないですけど、決してネガティブな意図はなく、自分自身がさらに強くなるために、折れないためでもありました。この敗戦はいろんな人にとってすごくショックな出来事ですけど、こうした記事からいろんなことを感じてほしいし、最終的に前を向いてほしいなと思います。

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