更新日時:2018.10.27
【AbemaTVさん、このネタどうですか?】「死神」なのか「妖精」なのか。公務員Fリーガー・宮崎曉の正体に迫る──。
PHOTO BY軍記ひろし
“バズり請負人”ことSAL編集部がAbemaTVのコメント欄を埋めるホットワードを激推しする新企画。今回はフウガドールすみだの愛されキャラ、宮崎曉。「死神」や「妖精」というおよそフットサル選手とは思われないような異名を持つ彼の正体に迫る。
フットサルができるだけで幸せ
死神。禍々しい風貌で大鎌を振り上げて人々の魂を奪い、忌み恐れられる存在──。スポーツで言うなら、相手の脅威となり、試合を決定づけ、息の根を止めてしまうような選手のことだろう。フウガドールすみだの宮崎曉は、もう10年ほど前からずっと“死神”と呼ばれ続けてきた。
名物解説者であり元フットサル日本代表の北原亘さんが「宮崎選手は『死神』と呼ばれているんです」と紹介してからは、宮崎がゴールを決めると、AbemaTVの試合中継で流れるコメント欄は「死神」の文字で埋まるようになった。ゲストで招かれた10代の女性タレントも「死神すごーい!」と盛り上がる。
Fリーグにおける“死神”とは、観客を虜にしてしまうホットワードなのだ。
その異名のルーツは意外と長く、今ではチームで一番の古株選手となった宮崎が、10年前にすみだ(当時はFUGA MEGURO)にやってきた時期までさかのぼる。
「(FUGA MEGUROが席巻していた)関東リーグにカフリンガ東久留米というチームがあって、その中心選手の夏野(雅生)さんが、チームメートの一人を『死神』って呼んでいたいたんです。でもあるとき、『もっと死神みたいなやつがいる』と、僕のことを死神と言い始めた。面識はなかったんですけど……」
フットボールスキルが高く、あらゆるプレーを高次元でこなしてしまう宮崎をリスペクトした上でのことだと思うが、どちらかというと当時は、失礼を承知で言えば、彼の血の気の薄い雰囲気がそう呼ばせていた。
気がつけばその通り名は、彼の愛されキャラと相まってどんどん定着していく。
「そんなに気にしてないです。(今も死神、死神と呼ばれるのは)どうせ亘さんのせいですよね。それで盛り上がるならそれで。でも亘さんは、『言っていい?』って律儀に聞いてきてくれるんですよ(笑)」
その言葉からわかるように、宮崎の物腰は柔らかい。「自分は主役じゃなくていい」と、率先して縁の下に潜り込むような選手だ。だからこそ、味方からは絶大の信頼が集まり、相手には“死神”と恐れられる。
攻守の切り替えが早く、短時間で著しく体力を奪われるフットサルでは、ベンチ入りしたフィールドプレーヤーを4人1組で2つか3つのセットに分けて、3分〜5分間隔で交代しながら戦うことが定石であり、“先発”や“先発外”という概念はあまり重要でない。ただ一方で、指揮官は通常、1stセットにもっとも信頼を寄せる4人を並べ、試合を通してそのセットのメンバーを組み替えないことが多い。すみだがまさにそれだ。
その中で宮崎は、ずっと1stセットのメンバーとして戦ってきた。クラブのレジェンド選手のサポート役として黒子に徹しながら、チャンスがあれば自らゴールを決めてしまう。そんな10年間だった。
第19節のバルドラール浦安戦で2得点を挙げ、チームを勝利に導いたそのプレーがまさにそうだった。
1-0で迎えた18分、春木(啓佑)からのパスを3人目の動きで走り込む大薗諒にダイレクトではたくと、大薗のシュートのこぼれ球を宮崎が決めた。さらに28分、カウンターで中央を駆け上がった宮崎は、右サイドの春木に預けて、その折り返しを流し込んで3-0と突き放したのだ。
「3人が関わるようなフットサルがしたいんです。その中で、シュートも大事ですが、あとは決めるだけというようなパスを出すことが好き。先輩から見て学んだことを、自分よりも若い選手に伝えたい」
すみだは今、春木や大薗、中田秀人など、若く生きのいい選手が台頭している。ただ彼らが輝けるのは、「すみだの真髄」を表現できる宮崎のような選手がいるからこそだろう。
「3人目が関わるには、しっかりと戻れることという大前提があります。だから3人目が走れるんです」
宮崎は1人目にも、2人目にも、3人目にもなって、自らのプレーでチームを引っ張っている。そのプレースタイルは、4年前にリーグ戦で23得点をマークしてチーム内得点王になったときも今も、変わらない。
「実は、フットサルを始める前、2年間のブランクがあったんです。サッカーはもう辞めようと思っていて、その2年は何もしていなかった。でもその時期があったおかげで、何かうまくいかなかったとしても、『フットサルができるだけで幸せだよな』って考えられる。『フットサルって楽しい』という気持ちがあればそれでいいのかなって思っています。だから続けられているのかもしれないですね」
宮崎は今、墨田区役所の職員として区内の図書館勤務という“もう一つの顔”を持っている。公務員として働きながら選手を続け、ピッチでは味方を支え続け、フットサルを愛し、味方やファンに愛され続けている。
ピッチ内外で見せる彼の正体を知れば、その姿は“死神”どころかまるで“妖精”のようだとも感じる。
「最近は妖精って言われていますけど、その理由はよくわかりません(笑)」
死神と妖精。対極の通り名でバズる彼は、自然体が売りのまぎれもないトッププレーヤーだ──。
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